メガイエロー


 
 「くっ!」
  シボレナは、苦戦していた。メガレンジャーの5対1という卑怯な戦法に対しては、
流石のネジレジアの戦士といえども防戦一方であった。
 「はっ!!」
 メガレッドの斬撃がシボレナの左肩を襲う。バキッという音とともにシボレナの肩の
防具が砕け散る。
 「あうっ!!」
 更なる5人の攻撃に、なすすべなく倒れ臥すシボレナ。
 (く・・・ここは一旦退くしか・・・)
 だが、このまま、一方的にやられたまま逃げたのではネジレジアの戦士の名折れである。
そんなことはシボレナにはできなかった。
 「とどめよ、シボレナ!!」
 そのとき、倒れたシボレナにとどめを刺そうと、一人メガイエローが突っ込んできた。
 ニヤリ・・・それを見たシボレナの唇が、妖しく歪んだ。
 「!!待てイエロー!!!」
 シボレナの笑みを見て危険を察知したメガブルーが、イエローを止めようとした。しかし、
すべてはもはや手遅れだった・・・
 「えっ?」
 ブルーの声に反応し、一瞬動きを止め後ろを振り返ろうとしたメガイエロー。その瞬間、
信じられないほどの速度で何かがイエローの顔面を襲った。
 「きゃあああっ!!!」
 あまりの衝撃にマスクが粉々になり、その下から鼻と口から血を流した千里の顔があらわれた。
  「な・・・何が・・・」
 それは、ただのパンチだった。シボレナから繰り出された、ただのパンチ。だが、威力が
今までのそれとは桁違いだった。
 シボレナには秘策があった。それはアンドロイドである彼女だけにしかできない戦法であった。
 「驚いた?私はね、体中の様々なシステムを維持するのに使われている電力を、全て運動機能に
回すことができるのよ。それによって爆発的に戦闘力を高められるわ。こんな風にね!!」
 シボレナはとてつもないスピードでメガイエローの周りを回り始ると、何度も何度も彼女を斬りつけた。
 「ああっ!きゃあっ!!あううっっ!!ああ〜〜〜〜〜っ!!!!」
 そうして何十回と攻撃を加えると、メガイエローの首を左手で掴み、持ち上げた。
 「終わりよ、メガイエロー・・・」
 「あ・・・あ・・・ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」
 シボレナは全ての電力を解放してメガイエローに浴びせた。普通の人間なら一瞬で黒焦げになるほどの
電流がメガイエローを責めたてる。強化スーツのおかげで何とか命は保っているものの、いつまで
スーツがもつかわからない。そうなったら・・・待っているのは、死だ。
 だが、シボレナにはそこまでの余裕がなかった。全ての電力を攻撃にまわすことで、体中のシステムが
停止してしまうからだ。長く続けていると、シボレナ自身が死んでしまう。
 「はあ・・・はあ・・・まあいいわ。ここまでにしてあげる。」
 そう言ってメガイエローを他の4人に投げつけると、そのまま彼女は消え去ってしまった。   
 「あーっはっはっは!!」
 去り際に、いつものあの笑い声が木霊する。
 イエローは、何とか一命はとりとめたようだ。しかし、いち早くスーツが破壊された手足が、
完全に黒焦げになっていて、もう使い物にならないだろう。他の4人の、誰もがもはや千里は戦士として
再起はできないだろうことを悟っていた。いや、そう悟らざるを得なかった。 
 「あーっはっはっは!!」
 いつまでも、4人の耳から、この笑い声が消えることはなかった・・・



            THE  END


 
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