「こ・・・ここは・・・?」
姫忍・恵美破こと山地ケイは、全く見知らぬ場所で目を覚ました。頭が激しく
痛む。なぜここにいるのか、一切彼女は思い出すことができなかった。
「ふふ・・・お目覚めかしら?」
「!!」
「だいぶ、混乱してるみたいね。何でこんなことになったか、教えてあげようか」
「・・・」
恵美破は、起き上がろうとした。だが、ベッドに縄で雁字搦めにされており、少しも
身動きができない状態に置かれていることに気づく。
「く・・・あなた、妖魔一族なの・・・?」
「他に誰があなたをこんな目に遭わせるっていうの?」
「わ・・・私を、どうするつもりなの・・・?」
「ふふ・・・」
女は不気味な薄笑いを浮かべると、恵美破が寝かされているベッドに座り込み、
彼女の唇に自らの唇を激しくあてがった。
「むっ・・・むぐぅーっ!!」
「ふふ、もしかして、ファーストキスだった?」
「そ、そんなこと・・・」
言いかけた恵美破の頬を、女は思い切り拳で殴りつける。
「だめよ、嘘は。初めて、でしょ?」
女の目に恐怖を覚えたか、恵美破は力なく頷く。
「・・・で、あなたをどうするかって話だったわね。・・・あなたの一族は伝説の
秘宝の在り処を示すものを代々守り継いでいるとか・・・だったら、あなたも
それを見て在り処を知ってるんじゃない?それを聞き出せ、というのが紅牙姉さまの
命令なの」
「姉・・・さま?」
「そう、私の名は蒼牙。紅牙姉さまの双子の妹よ。でもね・・・」
蒼牙の目に、昏い光が浮かぶ。
「ほんの少し、生まれた時間が違ったために、一方は次期当主、私は・・・影。
それでも・・・私は姉さまを尊敬しているわ。私にはないものを全て持っている。
権力も、運も、そして実力も・・・誰よりも、愛している。・・・そして、この世の
何よりも憎い・・・」
最後の方はもう独り言になってしまっていて恵美破には聞こえていなかった。だが
それが余計彼女の恐怖心を煽った。
「・・・私は、知らないわ」
そう言うことが彼女にできる精一杯の抵抗だった。
「ふふ・・・そう言うと思ったわ。そうでなきゃ、困るのよ。でも、それが一体
どういうことを招くか・・・くの一なら、わかるわよね。」
「く・・・」
拷問。もしくは処刑。敵に捕らわれた忍などというものは、それが運命なのだ。
今は秘宝の在り処を聞き出そうというのだから、前者だ。恐らく殺されはしない
だろう。殺しては拷問の意味もない。だが、凄惨な苦痛を味わわされるのは、明白だ。
恵美破は、心底怯えきっていたが、山地一族のくの一として、それを敵に見せる
わけには行かなかった。
「やるなら、やればいい・・・でも私は、何も言わないわ・・・」
相手は怒るだろう。そう、思っていた。その方がきっと、良かっただろうと後に
彼女は思うことになる。
「ふふ・・・好都合ね。私はあなたに何も喋らせるつもりはないわ。」
「えっ!?」
意外な言葉に驚く恵美破を尻目に、蒼牙は彼女の口にボールギャグを嵌め込む。
「これって日本のものじゃないけど、すごく気に入ってるのよね。可愛い娘の
間抜けな顔が見られるから。」
「うーっ!!うぐぅぅっっ!」
「拷問ってのは、相手が話してしまえばそれでお終い。でも私、秘宝なんて別に
どうだっていいんだもの。私の目的はただ・・・」
「・・・?」
「あなたのような可愛いくの一の、苦痛に歪んだ顔。それが見たいだけよ。」
「・・・・・・・・・!!!???」
蒼牙の目は、完全にイッてしまっていた。その目を見た瞬間、恵美破は最早くの一と
しての誇りや心構えなど、一切失くしてしまった。もう、何でも喋るからやめて、そう
叫びたかったが、口に嵌められたギャグがそれを許さない。出てくるのは、意味のない
叫び声と、開いた口から止めどなく流れ出る涎だけだった。
「うううーーーーーーーーーー!!!!!!ううううううーーーーーっっ!!!!」
「やっぱ拷問て言ったらこれよね。」
恵美破、いや山地ケイは、石抱き責めにかけられているところだった。それは、
鋭利な三角形が幾つもついた板の上に正座して乗せられ、そのひざの上に相当な重さの
石をいくつも置かれるというもので、これを長時間受ければまず足の骨は破壊され、
またひどい内出血で二度とその足は使い物にならなくなる。石を10枚も置かれれば、
どんな屈強な者でも恐らくは完全に意識を失うだろう。まだ石は5枚だったが、もう
恵美破からただのケイに戻った彼女にはとても耐えられる痛みではなかった。
「う・・・うっ」
「あら?もう気絶しちゃった?情けないわねぇ。それでもくの一なの?」
「・・まあいいわ。もっと、もっとしてあげる。こんなんじゃ、全然足りないのよ」
またしても、紅牙のことを話しているときに見せた、昏い目を見せて蒼牙はつぶやいた。
「この板、何に使うかわかる?」
ケイは、ゆっくりと蒼牙の方向へ顔を上げた。もうほとんど、痛みは感じなく
なっていた。痛みだけでない。恐怖も、何もかも全て。ケイは、まるで人形だった。
ただ、、声が聞こえたからそっちを見た。それだけだった。相手が自分に何をしようと
しているかなど、最早何の興味もないほど、精神は麻痺してしまっていた。
「はあ・・・」
そんな無反応なケイをつまらなそうに蒼牙はため息をついた。
「ま、いいわ。これで終わりにしましょう。」
その言葉が、死んでいたケイの心を甦らせた。もうすぐ、このつらい時間から解放
されるのだ。その安心感が、精神をわずかに回復させた。だが、そのままの方が彼女には
まだ幸せだったに違いない。
蒼牙は、取り出した板と縄をケイの両足に取り付けた。
「う・・・うううっ!!!」
「これはね、こうして足を破壊するものなのよ。どう、痛い?痛いわよね。アハハハハ!」
だが、苦しみ悶えるケイの前に、蒼牙はもっと恐ろしいものを持ってきた。
巨大な円錐形の鉄のトゲ。それを、恵美破の股の下に置いた。
「う・・・ううっっ」
あまりの恐怖に歪むケイの顔を見て、蒼牙はこう言い放った。
「やっぱり、あなたじゃ全然満足できない・・・私にとってはごみ以下ね、あなたは。」
そんな侮蔑など、ケイには全く聞こえていない。股下のトゲを凝視し、必死に逃れようと
もがく。
「あなたじゃ紅牙姉さまのかわりにはならない・・・」
「憎い・・・この手で、滅茶苦茶にしてやりたい。でも、心から愛しているからそれは
できない・・・だから私は、くの一を捕らえ、拷問してきた。姉さまのかわりに・・・」
「でも誰一人として、私を満足させてはくれなかった。あなたは、その中でも最悪ね。
すぐに抵抗する気力を失っちゃうんだから・・・」
「もう、いいわ。これで、終わりにしましょう。」
少しづつ、蒼牙はケイの頭を持って力をこめる。少しづつ、少しづつケイの尻の穴に、
トゲが食い込み、紅い血が鈍色の鉄のトゲを染め上げていく。
「グ・・・グ・・・うううううううううううううううーーーーーーっっ!!!」
「解放してあげるから、あとは好きにしなさい。」
深夜、街のゴミ捨て場に、ケイは尻から血を流しながら全裸で捨てられた。微かに、
意識はあるようだった。
「やっぱり・・・紅牙姉さまでなければ、駄目ね・・・」
「姉さま・・・待っていて下さいね・・・」
山地闘破、ジライヤの耳に、蝶忍・紅牙が姿を消したとの噂が届いたのは、それから
まもなくのことだった・・・。
THE END
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