「さて・・・今回はどんなゲームにするか・・・」
アバレキラーは退屈していた。今まで散々アバレンジャーで遊んできたが、いささか
それも飽きてきていた。
「そろそろ・・・一人くらい殺ってみるか」
そうすれば、奴らは怒り狂い、戦いがもっと刺激的になるだろう。刺激。それだけが
彼の求めるものであった。
「誰にするか・・・そうだな。女を散々にいたぶってやる方が、より悲惨で面白いか。
奴らもその方が燃えるだろ」
この瞬間、ターゲットはアバレイエロー・樹らんるに決定された。
「だが、ただ殺してもつまらんな。よし・・・」
「どうかした?らんるちゃん」
「え?・・・な、何でもない。」
(何・・・寒気?)
自分がアバレキラーの標的となっていることなど露知らぬはずのらんるであったが、
何故か自分でも説明のつかない言いようのない不安に襲われていた。
(何か・・・あるんだろうか)
誰かに聞いてもらいたい気もするが、あまり変なことを言って仲間たちを心配させるのは
よくない。そう思い、らんるはその不安を忘れることにした。
何か、明るい話題でも振ろう、そう思ってらんるが口を開きかけたときだった。
「テエヘンだテラ!凌駕!!プテラが街で暴れてるテラ!!」
突然、凌駕のブレスにティラノからのエマージェンシーがかかる。
「何ですって、プテラが!?」
あまりに突然の出来事に、立ち尽くすらんる。
「何やってる、行くぞ!」
「とにかく、確かめてみましょう!」
「あ・・・うん。」
二人の言うとおりだ。まずは真偽を確かめなければ。何かの間違いということだってある。
もしかしたらプテラに似せたギガノイドということもあり得る。先ほどの言いようのない
不安も相俟って、確かめるのは怖かったが、らんるは勇気を絞り出して足を踏み出した。
「アバレキラー!!?」
プテラが暴れているという現場で3人が目にしたのは、狂気の戦士の白い影であった。
「遅かったな、アバレンジャー」
「まさか、あなたがプテラを!!?」
「そうさ。意外と簡単に操れたんで、ちょっとつまらなかったがな。」
「く・・・っ!許さない!!」
変身し、3人で一斉にアバレキラーに飛び掛るアバレンジャー、しかし・・・
「行け!お前ら!!」
「!?」
そこへ2体のトリノイドが現れ、それぞれレッドとブルーを蹴り飛ばし、そのまま遠くへ
連れ去る。
「な、何なの!?」
「今回は、お前と二人きりになりたかったんでな。わざわざトリノイドを2体作らせた。
いくらあいつらでも、一人でトリノイドの相手はきついからな。」
コキコキと首を鳴らしながらジリジリと近寄ってくるアバレキラーの姿に、アバレイエローは
先ほどの言いようのない不安を再びよみがえらせていた。
「せからしかっ!!」
それを拭い去ろうとするかのように、専用武器・プテラダガーを両手に持ち、キラーに向かって
突進するイエロー。だが、イエローの攻撃など、捌くのはキラーにとっては朝飯前以下だった。
あっさりと両手のダガーを弾き飛ばされ、そのまま激しい一撃を腹に受ける。
「ああっ!!」
「まだ、終わりじゃねえぞ・・・」
言い終わるか終わらないかのうちに、イエローの周りを超高速で回り始めるキラー。そこから
さらに超高速の斬撃が何度もイエローを襲う。キラーの得意技だ。
「ああっ・・・きゃあっ!!ううーーっ!!!」
イエローは耐えきれない痛みにその場に倒れそうになるが、キラーの攻撃により倒れることは
できない。
「うううっ・・・だ、ダメよ、負けるわけにはいかない!このままじゃプテラが!!」
そう、自分が負ければ相棒のプテラはどうなってしまうのだ。ともに戦ってきた相棒のために、
アバレイエローは絶対に負けられなかった。
「はあああああっ!!!」
その気迫がイエローのダイノガッツを高め、アバレモードへと変身させる。そして渾身の一撃が
キラーの顔面にヒットし、キラーははるかかなたに吹き飛んだ。
「はあ・・・はあ・・・」
これで、プテラを救うことができる。そう思ってイエローは背後のプテラの方に振り向いた。
「え!!?」
プテラは、真後ろにいた。気づかぬうちに、近づいていたのだった。
「プテラ・・・?」
「・・・・・・」
返事がない。どうやらまだ操られたままの状態らしい。
「プテラ!お願い、目を覚まして!!私がわからないの!!?」
その問いに対して、今度は明確な答えが返ってきた。プテラは右の翼でイエローをなぎ払ったのだった。
「きゃあああっ!!!」
巨大な爆竜の攻撃は、強化スーツに身を包んだアバレイエローといえども平気でいられるものでは
なかった。
「う・・・うっ、スーツが・・・」
胸元が破れ、らんるの豊かな乳房があらわになっていた。
だが、それだけでは終わるはずがなかった。立ち上がることもできないイエローを、プテラは口に
くわえ、飛んでいく。そのまま周囲の建物に、何度も叩きつけられる。プテラはマッハ1・2で飛ぶ
ことができるため、その衝撃は計り知れなかった。ボロボロになったイエローは、最後には上空から
思い切り地面に叩きつけられた。
「あ・・・ああ・・・」
瀕死の、重傷だった。身体は勿論だが、信頼する相棒のプテラに負わされた傷であるだけに、
精神ももはや瀕死だった。
「いい様だな、アバレイエロー」
「ア・・・バレ、キ・・・ラー・・・」
負けない・・・こんな奴に・・・!どんなに窮地に陥ろうと、心までボロボロにされようと、決して
負けない。それが正義のヒロイン・アバレイエローだった。
「いいねえ、その顔・・・それでこそゲームも楽しめるってもんだ。・・・だが、どのみちもう
立ち上がることすらできないだろう。今回のゲームはもう終わりだな。楽しませてもらったぜ。
もっとも、これからもっと楽しいゲームが待ってるんだがな・・・」
「ま・・・けな・・・い・・・ぜっ・・・た・・・い・・・」
「もういいっての。おいプテラ、こいつ食っちまっていいぞ」
そう言ってキラーはその場を後にした。
巨大なプテラの口に、再びイエローはくわえられる。
「ぜった・・・いに・・・まけ・・・な・・・」
最期の最期まで、彼女は屈することなく戦い続けた。
そのもはや何も映さぬ両の眼の先にあるのは
ただただ蒼い空だった。雲ひとつない、抜けるような蒼い空だった・・・
THE END
|