メルザード壊滅から1年。世の中はそんなものの存在など
まるで初めからなかったかのように、今や平穏そのものだった。
かつての戦士たちもまた、戦いのない日常にもうすっかり
慣れてしまっていた。
そんなある日、ビーファイターテントウであった蘭のもとに
1通の封書が届く。
そのあまりの内容に、蘭は絶句する。
封書の中身は、1枚の写真。それはかつての仲間のあまりにも
無残な姿。
焼け焦げて煙を発するアゲハのネオインセクトアーマー。
マスクは破れ、顔の一部が垣間見え、髪の毛も露出していた。
目は、すでに光を失っていた。腕も力なく垂れ下がる。
…もう、死んでいる。おそらく…いや、間違いなく。
彼女…かつての仲間、ソフィーをそんな目にあわせたのは、
写真にうつっている緑の「それ」だろう。
「それ」の股間には、ドリルが生えていた。
(何故そんなものが生えているのかは不明だが、生えているの
だから生えているとしか言いようがない。)
どうやらそのドリルでアゲハの股間のパーツに穴を開けて
尻の穴に突っ込んだらしい。
それがソフィーの死因となったのかもしれない。
そんなことを考えている場合ではないのだろうけど…
人間は真に驚愕すべき事態に直面したとき、驚くことすら
できぬものらしい。そんなことを蘭は写真を見ながら
淡々と思い浮かべていた。
…その、瞬間。
写真の「それ」と目が合った。そう思ったとき、蘭は自分が
見知らぬ空間にいることを知った。足元には…
ソフィー。
いや、ソフィーだったもの。
そして背後から、声が聞こえる。
「ツギハオマエダ…!!」
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