マジレンジャーたちは、全力で(マジピンク=芳香)を捜していた。芳香は、バンキュリアに血を吸われ、
吸血鬼になってしまっていた。日光を浴びると身体が灰になってしまう為、魔法部屋に閉じ込められていたが、
脱走し行方不明になっていたのだ。広範囲を捜す為、それぞれが街中に散っていった。
麗は、街外れの工場地帯にいた。芳香が日光を嫌っていた事から、この辺りにいるのでは、と思い捜していたのだ。
この辺りは、ほとんどが廃工場になってしまい、身を隠すには最適だったからだ。
(早くしないと、芳香ちゃんが灰になっちゃう!!)
友達の様に仲の良い姉を救うためにも、一刻も早く見つけなければならなかった。廃工場の中を捜していると、
奥の方から物音が聞こえてきた。
麗が物音のする方へ駆けて行くと、なんとマジピンクが大勢のハイゾビルと戦い、追い詰められているでないか!
「芳香ちゃん!!マージ・マジ・マジーロ!マジブルー!」
マージフォンをかざし、呪文を唱えると麗の身体は、シルバーのインナースーツとブルーのスーツに包まれ、
マジブルーに変わっていった。
「マジスティク!芳香ちゃんを放せッ!」
マジピンクに駆け寄りながら、怒り心頭のマジブルーはハイゾビルの群れをマジスティクで見る見る間に倒していった。
「芳香ちゃん!大丈夫!」
「ありがとう、麗。私なら平気よ。」
振り返りながら、芳香は言った。
何か違和感を感じながらも、間に合ってよかった、と麗は思った。この位の数なら、2人なら倒せる。
マジピンクと背中合わせになったマジブルーが、敵に向かって走り出した瞬間、マジピンクが振り返った。
「ジー・マジカ!ハッ!」
(えっ!!ぐはッ!)
マジブルーは、突然、背後からのキックを受け、何メートルも吹っ飛び、壁にメリ込んで止まった。
「くぁぁ・・・な・・なに・・・が・・・」
薄れる意識の中でマジブルーは、思っていた。
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朽ち果てた教会の祭壇に腕を上向きに縛られ、ちょうどY字型にマジブルーが磔にされていた。スーツは、ボロボロにされ、
シルバーのインナーが露出していた。
所々インナーが破れ血が滲んでいる。しかし、その視線は、眼の前の宿敵を見据えていた。
(バンパイア・クイーン=バンキュリア)。
それが、そのバケモノの名だった。芳香の血を吸い、吸血鬼にした張本人。今、芳香が苦しんでいるのは、こいつの仕業だった。
「楽しんでるかい? 青色の魔法使い!こんなに、責め甲斐の有る相手は、久しぶりさぁ!」
明らかに興奮していた。いつもならナイとメアに分かれるのだが、今日はそのまま、ムチを振るっていた。
「さあ、早く正義なんて棄てちまいな!負けを認めるんだよ!そうすれば、楽になれるよッ!」
しかし、そんな事は出来なかった。ここで負けたら、もう芳香を元に戻す事が出来ない。何としても、コイツを倒さなければ、
芳香は、灰になってしまう。それだけは・・・
「さっきの戦いで、お前、負けたんだよ。さっさと諦めなッ!」
だが、さしものバンキュリアも疲れて来たようだ。ムチも明らかに回数が減って来ていた。
「お前を・・倒せば・・芳香ちゃんは・・・元に・・戻るんだぁ・・・芳香ちゃんを・・返せぇ!」
力を振り絞りマジブルーは、バンキュリアに言い放った。すると、
「フッ、ククククッ。良いだろう。会わせてやるわ!マジピンクちゃんにね!ハハハハハッ!」
(えっ!芳香ちゃんがここに?無事なの?)
マジブルーは、芳香の安否が心配だった。ただでさえ血を吸われているのだ。一緒にさらわれたのなら、マジピンクも同じ目に・・・
「さあ!感動の御対面だよッ!来なッ、マジピンク!」
「・・はい。・・バンキュリア様・・・」
バンキュリアが呼ぶと、暗がりから、スッとマジピンクが現れた。傷一つ無い様だ。
マジピンクの無事を確認したマジブルーは安心した。だが、何か様子がおかしい。
「マジブルーのマスクを取って、外をしっかり見せてお上げ。」
「・・はい。・・マジーネ・・・」
マジピンクがマージフォンを取りだすとマジブルーのマスクに当て呪文を唱えた。するとマスクの魔法だけが解除され、麗の素顔が現れた。
「うそ!・・なんで芳香ちゃんが・・バンキュリアの命令を・・」
マスクが無くなったマジブルーは、驚きの表情で言った。
「何で頭しか解除できないの?!ホント、バカはダメね。全く。さて、どう?マジブルー?御対面の感想は?」
マジピンクがバンキュリアの命令を聞き、自分の変身を解除した。それが、信じられない。一体、何故・・・?
「バンパイアに血を吸われた者は、操り人形になるのさ!そいつも、もはや私の言いなりさ!」
そんな、バカな!血を吸われただけで、姉妹も判らなくなるなんて!姉妹の絆は、そんなモノに負けるハズない!
「芳香ちゃん!私よ!麗よ!しっかりして!」
麗は、マジピンク、いや、芳香に叫びかけた。絶対に絆は、負けない!血の繋がった姉妹だから!
「ムダムダ。もう、何を言ってもムダよ。フフッ。そうだ!それなら、お前もコイツと同じ様にしてあげるわ!」
そう言うと、バンキュリアは、磔のマジブルーに近寄っていった。
「イヤッ!来ないで!芳香ちゃん、助けてぇ!」
本能的な恐怖に先程までの覚悟は、一気に吹き飛んでしまった。肉体を傷つけられるのは、耐えられたが、
身体を喰われるのは、耐えられなかった。
一気に恐怖で身体が震えだす。止めようとしたが、止まらなかった。バンキュリアの牙が首筋のインナーを貫通し、皮膚を貫いていった。
(ズブッ!ゴキュ!ゴキュ!ゴキュ!)
「うああああ!いやあああぁ!やめてえええぇ!うぎいいいいぃ!」
首筋に喰いつかれ、のた打ち回りながら血を吸われるマジブルー。血を吸われる嫌悪感と恐怖で半狂乱になってしまっていた。
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「ああっ・・お前、処女ね。血のうまみが違うよ。フフフ。マジピンクは、不味かったけど、お前のは、上物だね。」
バンキュリアは血塗れのマジブルーから離れながら、そう言い放った
「うぁぁぁ・・もう・・・いやあぁ・・・ひぐううぅ・・」
虚ろな目で虚空を見上げ、マジブルーは磔のまま、身体を痙攣させていた。勇気は砕けてしまい、魔法も使えなくなり、マジスーツも、
もうタダの布きれと変わらなかった。
下腹部から、すでに失禁までしてしまった。普段の麗からは想像も出来ない醜態だったが、あまりの恐怖に耐える事が出来なかった。
(ううぅ、芳香ちゃん、たすけてぇ・・・ううっ・・ううぅ・・)
「あぁら、そういえば、ペットにもエサの時間かしら?」
バンキュリアの声に身体を震わせ、マジブルーはその声をきていた。急に恐怖で意識がハッキリとしてきたが、やはり勇気は湧いて来なかった。
「来な!マジピンク!エサの時間だよ!」
「・・はい。・・・バンキュリア様・・」
マジピンクが現れ、バンキュリアに跪いた。
「ほら、御馳走だよ。・・・ハラ一杯、お食べ!」
バンキュリアが指差したのは磔になったマジブルーだった!
「・・はい・・いただきます!」
マジピンクは、そう言うとはじめて、ハッキリと返事をした。自らマスクを解除すると、獲物を狙う目でマジブルーを見た。
(まさか、私の血を狙ってる?そんな!やめて!)
涙を流し、怯えきったマジブルーにマジピンクは、そっと言った。
「大丈夫よ、麗ちゃん。私達、姉妹じゃない。とっても舌に合うわ、きっと。うふふ。」
そう言うと、マジブルーの喉に噛み付いた!
(ズブッ!ゴキュ!ゴキュ!ゴキュ!)
凄まじい音を立て、芳香は麗の血を吸い始めた。凄い勢いで吸うので、マジブルーのス−ツは、口からこぼれた血で、胸や腹部までが
血塗れになっていった。
血塗れの妹の首に食らい付き、血を吸うマジピンクという、凄まじい光景だった。
「ぎゃああああ!やべでえええ!ぐぶうあがあああ!ひぎゃあああ!かはぁ!かはっ!」
ケモノの様な叫びを上げ、マジブルーは姉に血を吸われていった。白目を剥き、身体は、ショックで痙攣し、力は、どんどん抜けていった。
食事の終え、口を拭う芳香にバンキュリアが声を掛けた。
「どう?処女の血は?マジブルー、おいしかった?」
「はい。力がみなぎる様です。でも、もっと味わいたい・・・」
うっとりした目で芳香は、マジブルーを見た。涙や涎で汚れた青白い素顔を晒し、スーツは血塗れでズタズタにされ、恐怖で失神した妹は、
気を失ったまま、再び股間から小水を滴らせ、磔にされていた。
「さあ、マジピンク、命令よ!そのまま、日光浴なさい!今度はアンタの死ぬ所が見て見たいわ!面白いそうだから、意識は戻してア・ゲ・ル!」
そう言うと、バンキュリアは芳香の意識だけを元に戻した。意識だけ正気になったマジピンクは、マジブルーの凄惨な姿を見て愕然とした。
「えっ、う、麗ちゃん!麗ちゃん、しっかりしてぇ!御願い、何でもするから、麗ちゃんだけは助けて!御願い!」
マジピンクは、必死に懇願した。宿敵であるインフェルシアに助けを求めたのである。しかし、
「アンタ、人の心配してる場合じゃ無いんじゃないの?アンタの身体、日光の方へ歩いてるわよ?日に当ると灰になっちゃうわよ?いいの?」
バンキュリアの言葉どうり、マジピンクの足は、日光の方にゆっくりと、しかし、確実に歩いていた。
「えっ!うわああ!いやあああ!と、止めてえええ!いやあああ!死にたくないよぉ!」
日の光は、もうそこまで迫っていた。力を込めるが、全くスピードが変化しない。とうとう日光が、身体に当り始めた。
「うああああ、熱いいいいい!ぎゃあああああ!燃えるうううう!助けてえええ!」
みるみる間にマジピンクの身体が炎を上げて燃え上がって行く。足、腿、腹部、胸と灰になって崩れる。
(ぎゃぁぁぁ・・)と言う断末魔を上げ、焦げた頭を残して(マジピンク=小津 芳香)の身体は、全て灰になっていった。
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マジブルーの身体は床に降ろされ、ひざまずく様に手と首を器具に固定されていた。
「とっとと、起きるんだよ!」
「起きるんだよ!」
ナイとメアのムチで意識を取り戻したマジブルーは、自分の身体が固定されている事に気が付いた。
(うあぁ!な、何?身体が動かない!)
「オマエで遊ぶのも、もう、飽きちゃた。だから、ショーをやってやるよ。」
「ショーをやってやるよ。」
マジブルーを固定した器具を叩きながら、ナイとメアが言った
「ショー?な、何をする気なの・・もう、ゆるしてぇ・・」
マジブルーが、泣きながら首を振った
「これは、インフェルシアに伝わる魔道器機で(嘆きのギロチン)って、言うの。カッコイイでしょ?」
「カッコイイでしょ?じゃあ、ショータイム!!」
メアが言うと、マジブルーの傷だらけの首の上を巨大な刃が上がっていった。
「い、いやぁぁ!殺さないでぇぇ!死にたくなぃぃ!助けてぇぇぇ!」
マジブルーは、泣き叫びながら、命乞いを始めた。もう、恐怖に打ち勝つ事は、出来なかった。
「何、コイツら!死にたくなぃ、しか言えないの!バッカじゃないの!」
「バッカじゃないの!でも、死なないよ。いや、死ねない、かな」
「死ねない、かな。キャハハハハハ!」
ナイとメアが紐を引くと、巨大な刃が下に落ちた。
「いやぁぁぁぁ!」
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3人のマジレンジャーは、バンキュリアと対峙していた。二人の姉妹が行方不明になったままだったからだ。
「あら、今日は、随分少ないのねぇ。どうしたの。残りは?」
「うるさい!お前を倒して、芳香姉ちゃんを元に戻すんだッ」
マジレッドが叫ぶ。他の二人も同じ決意の様だ。
「あら、コワイ。でも、アンタの言ってんの、コイツの事かしら?」
そう言うと、焼け焦げた塊を、マジレッドに投げつけた。キャッチしたマジレッドは驚愕した。
「ほ、芳香・・姉ちゃん・・・!」
その塊は、マジレッドの手の中で灰になり、崩れ落ちていった。
「畜生ッ!!殺してやる!!」
マジレッドの怒りは、最高値に達していた。正義の魔法使いらしからぬ、セリフが口を出ていた。
「あらあら。コワイ、コワイ。でもオマエ達の相手は、コイツよ!おいで!デュラハン!!」
バンキュリアが呼ぶと、青いボロ布を纏い、首を抱えた華奢な影が現れた。
「う、麗・・!」「チィ姉・・!」「麗姉・・・!」
それは、ボロボロにされて首を切り落とされた(マジブルー=小津 麗)の姿だった。
「かわいいでしょ。アンタ達に倒せるかしら?やれ!!」
「ウオオオオォ!!」
デュラハンは、悲鳴の様な叫び声を上げ、マジレンジャー達に向かって行った。
「フフフ。楽になんて殺さないわよ、マジブルー!クククク。」
(苦しぃ・・御願ぃ・・助けてぇ・・殺してぇ・・・・)
悪魔に敗れた青の魔法使いには、死すら許されなかった・・・。
(文章:ミョーコス様)
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