数ヶ月ほど前から、兆候はあった。
はるか南方から、異質な魔力が感じられるようになった。
そしてそれは、少しづつ、そして確実に強くなっていった。
南には、アルティラーナと呼ばれる大陸があった。
そこは古より禍々しい魔力が満ち、自然は歪み人は住めぬ暗黒の大陸。
かねてより、伝説の”神帝”と”十二神王”が眠ると噂される忌まわしき地。
だがそこははるか海のかなたにあり、決してそのいびつな魔力が
流れてくるようなことはなかった。
…これまでは。
名君と誉れ高き聖女王ゼノビア1世は、調査隊の派遣を決断する。。
その隊長には聖女騎士団でも屈指の実力者、第十騎士隊副隊長ジャッキー・エルレインを任命、
以下精強なる聖女騎士20名がアルティラーナへと派遣される。
それから数週間後のこと、調査隊の隊長ジャッキーが帰還する。
…瀕死の重傷を負い、血にまみれた変わり果てた姿で。
…ただ独りで。
ゼノビアはその治癒の力によりジャッキーの傷を治し、何事かを問うた。
現在の聖女騎士団において5本の指に入る使い手の彼女が、
一人の部下も連れず、死んでいてもおかしくないほどの深手を負って帰ってきた。
この事実が何を告げているのかは火を見るよりも明らかだった。
だが、信じたくはなかったのだ。はっきりとそれを告げられるまでは。
それは女神によって預言されていた。
それはいつか必ず起こると。
再び神々の争いが起これば、女神の力が世界に及ばなくなると。
…それは、世界の終わりを意味すると。
だが無情にもそれは告げられた。
アルティラーナの中心部において、突如とてつもなく強大で邪悪な魔力をもった存在の
襲撃を受けたこと。
部下は全滅、自身も深手を負ったこと。
その者がこう名乗ったこと。
「十二神王の一人、 ”闘王”ファフニル」と。
ゼノビアはしばし天を仰いだ。そしてすぐに居並ぶ群臣に向きなおった。
その目に強い光を宿し…
彼女はもう、誰かに頼り甘えるだけの子どもではなかった。
たとえそれが女神の定めた運命だとしても、
たとえ滅びは止められないのだとしても、
最後まで抗い続ける、そう覚悟を決めた。
世界を滅ぼさないための方法は、ただ一つ。
神々の戦いを再び起こさせないこと。
人の手により神帝パルティアと十二神王を滅すること。
ゼノビアは聖女騎士団長シエラに命ずる。
あの伝説の部隊を再び結成することを。
19年前の”魔石大戦”でこのパルミラを救った、伝説の騎士たちの後継たる
新たなクロスナイツを…!
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