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 烈火の騎士、シスター・ブレイズこと聖女騎士団第1騎士隊隊長
エリーゼ・アグストリアは、敵を追って王都のはずれにある小さな教会に
入った。しかし彼女はそこで、驚くべきものを見る。
 「パメラ…先…輩…!?」
 「ふふ…久しぶりですね、エリーゼ」
 それはまだエリーゼたちが聖女騎士団に入る以前、リーヴェ神学校時代の
上級生、パメラ・カダインであった。
 「ど、どうして先輩が…まさか、そんな…」
 パメラはエリーゼより4年先輩であり、現聖女騎士団長エーヴェル・
レンスターの同級生で、まさに聖女と呼ばれるに相応しい慈愛に満ちた性格と
その卓越した剣術で、将来を嘱望されていた。
 エリーゼたちも、エーヴェルに対してと同じように彼女に憧れ、目標としていた。
エーヴェルもまた友としてパメラを信頼し、また尊敬していた。
 しかし突然、彼女は姿を消してしまう。秘中の秘・ダークマターを盗み出して
姿をくらませた王女クレオ…すなわち聖女王国パルミラをおびやかす闇の存在・
魔女王国イサドラの魔女王クレオとともに。
 
 あまりの信じがたい出来事に驚愕と動揺を隠せないエリーゼではあったが、
しかしやはり彼女は聖女騎士団の最精鋭部隊・第1騎士隊の隊長を務めるほどの
人物である。すぐに気を取り直し、戦闘態勢を取った。
 「…先輩…たとえ相手が先輩であっても、この国の人々にあだなす者は、
許すわけにはいきません…」
 「ふふ…すばらしいわ。それでこそ聖女騎士というものよ」
 そうして微笑むその表情は、かわいい後輩の成長を心から喜んでいる先輩のそれと
しか、誰の目にも映らなかっただろう。その笑顔に、エリーゼの心は再び揺れる。
だが…
 「だから私は、あなたが憎かったのよ」
 天使のような微笑みと清らかで心地のいい声は、突然悪魔のように邪悪なひきつった
笑い顔と、どす黒く、低い、縮み上がるような恐ろしい声とに変わっていた。
 「せ、先…輩?」
 「あなたさえ現れなければ、私はずっとあの頃の清らかなままでいられたのに」
 もはやそれは、エリーゼがかつて尊敬していた先輩とはまるで別人であった。 
 「あなたが私に、嫉妬と言う感情があることを教えてくれた。あなたを見ていて
はっきりと感じられたわ。この子はいつか、私やエーヴェルを超えるだろうとね」
 「ウソです、そんな…私なんか、全然先輩たちにかなわなかった…今だって…」
 「いいえ、それはあなたがまだ気づいていないだけよ。自分の力にね…
私はずっと、あなたが怖かったの。あなただけじゃない。そんなあなたに嫉妬し、
それまで知ることのなかったどす黒い感情を持つようになった自分もね…。
そんな時だったわ、クレオ様にお声をかけていただいたのは」
  そこで言葉を切ったパメラは、懐からこぶし大の黒い石を取り出した。イサドラの
戦士たちが使う、欲望や憎しみに反応し力を与える暗黒物質・ダークマターだ。
 「クレオ様は、ありのままの自分を受け入れろと仰った…」
 みるみるパメラの体が変化していく。天使のように美しいその相貌や肢体が、
化け物のそれへと変貌していく…
 「パメラ先輩…」
 そこにいるのは最早、この国に害を為すただの敵であった。エリーゼはすでに、
覚悟を決めていた。
 「あなたを…倒します。私の手で…!」
 エリーゼはそう言い終わるが早いか、その通り名にふさわしく烈火のごとき
いきおいでレイピアをパメラめがけて繰り出した。だがかつてはあのエーヴェルとさえ
互角といわれたほどの実力を持つパメラである。普通の者なら一瞬で葬り去られるで
あろうエリーゼの怒涛の攻撃を何なくやりすごすと、その尻に生えた3本の尾で
エリーゼを絡め取リ、身動きを取れなくさせてしまった。
 「あ、ううっ…!!」
 息もできないほどに強く獲物を締め付けながら、捕食者は悠然と言い放つ。
 「どうやらまだ今は…私のほうが上のようね。けれど、それが…全てよ」
 いくら才があろうと、可能性があろうと、戦いにおいてものを言うのは、現時点での
力量である。エリーゼのそれは…今はまだ、パメラには届かなかった。
 「さあ、お楽しみはこれからよ…」
 「なっ…!!?」
 エリーゼは信じられないものを目の当たりにしていた。パメラの股間には…なんと、
女性にはありえないものがそそり立っていたのだ。
 「これが、ダークマターよ。どんな欲望も叶えてくれる…」
 声が、震えていた。それは悦びなのか、それとも穢れた自分への畏れだったのか。
 「ずっと、あなたを穢してやりたかった…私をこんな風にしたあなたを…」
 「そ、そんなこと、私は…ああっ!!」
 問答無用と言わんばかりに、パメラは背後からエリーゼのそれを突き上げた。
 「ああっ…あふぅ…あっ、ああああああーーーーーーーっ!!!」
 何度も何度も、エリーゼは絶頂へと昇りつめさせられた。その強固な意志の力でさえ、
湧き上がる愉悦を抑えきれなくなっていた。
 「はあ…はあ…どう?満足したかしら…」
 もう何時間たったのだろうか。時間の感覚も徐々に失われ始めた頃、突然パメラは
エリーゼを解放した。
 「う…」
 「ここで壊してしまったら、生きる意味がなくなってしまうじゃないの」
 そう言って笑いながらパメラは倒れ伏しいまだ快感の余韻から抜け出せぬ
エリーゼに背を向けた。
 「強く、おなりなさい…私を憎むなら、私より強く…そして私を…その手で…」
 またしても、その声は震えていた。
 「殺しなさい…!!」
 「せん…ぱ…い…」
 去り行く後姿しか見えなかったが、何故かエリーゼには、パメラが泣いているのでは
ないかと感じられた。どうしてかわからないが、無性にそう、感じられた。
 「私…強くなります。」
 堕落を促す、いまだ衰えきらぬ悪夢のような快感の波を必死で押さえつけて、彼女は
立ち上がった。
 「そして必ず…救ってみせます。あなたを…!!」
 燃え盛る紅蓮の炎のように、その瞳は熱かった。
  


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