敵兵を捕虜にした場合、本来なら金銭や自軍のうちで捕虜にされてしまった者と交換するのが 常だ。 シノン公子、リースもまた、敵軍の捕虜となった竜騎士ラレンティアに対し、帝国から 金銭での交換要請があるものと思っていた。だが、帝国は金銭も、捕虜交換の要求もなしに、 彼女を送り返してきた。ただし…首から上のない、死体だった。 散々に犯され尽くしたとおぼしい、薄汚れた裸の遺骸。 今はラーズ側となったペシルの騎士でありながら、同盟に帰順した彼女を、帝国は許さず、 捕虜とせずにそのまま処刑してしまったのだ。 その首は彼女の故国ペシルに晒され、裏切り者の末路として見せしめとされた。 同胞であったはずの人々は口々に彼女を罵り、石を投げた。 気高く心優しき女騎士は、ここに無惨な最期を迎えた… |