ピンクマスク・モモコはその日、一人でパトロールに出かけていた。
  市街・街はずれの採掘場・廃工場など調べ、基地へ帰るところだった。そこに何者かが攻撃をしてきた。
  「きゃああっ!」
  突然の攻撃に対処できず、もんどりうって倒れるピンクマスク、何が起こったのか理解できない彼女が背後を見やると、
悠然とそれは立ち尽くしていた。全身を妖しく輝く鏡を甲冑のように包んだそれが、おそらく彼女を攻撃したのだろう。
  「く………あああっ………」
 何故、こんなに痛いんだろう。
  強化スーツを身にまとっているはずの彼女は、たったの一撃でこれほどのダメージを負っていることにとまどっていた。
今まで、強化スーツが護ってくれていたため戦っていたはいえ、これほどの痛みは感じたことがなかった。
 「あ………あなたは、一体………!?」
  「俺か?俺はミラードグラー。………今までのやつとは次元が違う、最強の地底獣さ!!」
  「最強の………地底獣!?」
 「今回の作戦は、ピンクマスク。マスクマンヒロインの破壊が目的でね………その標的にピンクマスク、
貴様が選ばれたのだ。光栄に思え!」
  (じ………実験台、ですって………?)
  やはり………すべてはピンクマスクを罠にはめるためだったのだ。だが、気づいたときにはもう遅かった。
彼女はもはや完全に抜け出すことのできない罠にかかってしまっていた。
  「あなたたちの作戦どおりになんか、行かないわ!」
 体を襲う激痛に耐え、何とか立ち上がったピンクマスクは、敵めがけてパンチ・キックを繰り出す。しかし、
当たってもミラードグラーはビクともしなかった。その硬いボディの前に一切通じている様子はなかった。
もともとが、戦闘などとは縁遠い、単なる女性だったマスクマンである。しかも、彼女は非力であった。
いかに強化スーツで強化されていようと、最強の地底獣にとっては足もとにも及ばないのであった。
 「マスクマンといっても所詮は女。俺の敵ではない!!」
 ピンクマスクのみぞおちに強烈な拳が食い込む。
 「う………ああっ!!!」
あまりの衝撃に数メートル後ろへ吹っ飛ばされ、仰向けに倒れてしまったピンクマスク。
  「ううがはっ!ごほっ!!」
 またしても、感じたことのない激痛が彼女に襲い掛かる。だが………
  「こ………んなところ………で、やられるわけには………いかないわ!!」
  不屈の闘志でボロボロの体を起こしたピンクマスクは、腰についてあるビームガンレーザーマグナムを抜き放ち、
敵に向かって浴びせかけた。
 「はっ!!」
 「馬鹿め!!こんなものが効くか!!」
  レーザーマグナムから放たれた閃光は、ミラードグラーの鏡に触れた瞬間、それを破るどころか、倍化され放った
  ピンクマスクめがけて跳ね返ってきた。
  「きゃああーっ!!!」
 実際、レーザーマグナムはかなり強力な武器であり、皮肉にも彼女はそのことを身をもって体験することに
なってしまった。だが、それすらも奴には効き目がない。
 「うう………あっ………ま、まだよ………まだ、やれるわ………」
 それでも決して諦めないのが正義のヒロイン、ピンクマスクだった。ビームガンが効かないなら、彼女は
立ち上がりレーザーマグナムをソードモードに変えてふたたび挑みかかる。だが、彼女の剣を、ミラードグラーは
全く受けようとせず、逆にミラードグラーの腕がにゅっと伸び、ピンクマスクをつかみ、引き寄せ、怪音波を
送ってきた。彼女はミラードグラーの胸元に抱え込まれ、そこで猛烈な音波の集中攻撃を浴び始めた。
  「うう、うきゃぁああああっ!」
  「いい小娘だからなあ、じっくりと楽しまなきゃな」
  ミラードグラーは、ますますピンクマスクをきつく抱きかかえ、怪音波を送り続けた。
  「きゃあぁぁ」
  ピンクマスクはミラードグラーの怪音波をまともに受け、また仰向けに倒れてしまったピンクマスク。
  (な、なんて強いの)
 どれだけやっても、かすりもしない。そうしているうちにもピンクマスクの相当損傷した体から、少しずつ
力が失われていく。もはや、当たったとしても傷すらつけられないかもしれない………
 少しずつ、しかし確実に、諦めないはずの正義のヒロインを絶望と諦めが蝕み始めていた。
 「く………ううっ」
 彼女が力なく剣をふりかぶった、その一瞬。左下から右上へと斬りあげられたミラードグラーの一撃が、
ピンクマスクの剣をいとも簡単に、まるで細い棒きれか何かのように叩き折った。そしてそのまま返しで
ピンクマスクの体にたたみかけ、もう一度、今度は左上から攻撃が襲う。
 「あ………あ、あ………」
  あまりの激痛に、もはや感覚が麻痺してしまった彼女は、叫ぶことすらできずにその場に倒れこんだ。
強化スーツが悲鳴をあげている。もはや次の一撃に耐えることができないのは明白だった。その強化スーツ・
マスキースーツは、彼女はそれに絶対の自信と信頼を持っていた。それが、まさか数回のダメージで使い物に
ならなくなるなんて………
  肉体的な痛みだけでなく、激しい精神的ショックが彼女を襲う。だが、それでもまだ、彼女の精神力を
打ち砕くに十分ではなかった。なぜなら、最強の武器、マスキーリボン。まだ彼女にはそれが残されていたからだ。
マスキーリボンは負けない。そう、彼女は思っていた。そして彼女はリボンを取り出すと、最後の力を振り絞って、
リボンを放った。
  「マスキーリボン!!」
  マスキーリボンはミラードグラーの体に巻きつく。電撃を放ってミラードグラーに大ダメージを与える………。 
はずだった。
  それどころか、地底獣はその電撃を受け止め、倍化された電撃がピンクマスクめがけてふたたび跳ね返ってきた。
特にレーザーマグナムでダメージを負ったところにもきたので、更なる苦痛が彼女を襲う。
  「う………そ………マスキーリボンまで………」
  すべての攻撃を封じられ、完全に戦意を喪失してしまったピンクマスクは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そんな彼女に、無常にも拳が振り下ろされる。何とか持っていたマスキーリボンで防ごうとする彼女だったが、
そんなものが地底獣の一撃を防ぐ手立てになるはずもなく、あっさり破壊されてしまう。
 「ああ………マスキーリボンがっ………!」
 「武器の心配などしてる場合か? 小娘!!」
 「え………あ………っ?」
 ミラードグラーの一撃で破壊されたのは、マスキーリボンだけではなかった。彼女のスーツのベルト部分にある
ハイテクボックスが、無残にも壊されてしまった。そのショックからか、オーラパワーの強さを示すマスク中央の
インジケータは、800から100を切るところまで急激に下がっていた。
  「はぁ、はぁ、はぁ」
  ミラードグラーは薄笑いを浮かべ、ゆっくりとピンクマスクに近寄った。
  「立て! 立つんだ!」
  そういうと、いきなりピンクマスクの首筋を両手で絞め、そのまま引き上げた。ピンクマスクは両手を垂れ、
ミラードグラーのサンドバッグと化してしまった。
  「これぐらいで終わりとはな」
  ピンクマスクは首をかすかにあげ、震える小さい声で応えた。
  「こ、これくらいで。……ピ、ピンクマスクは負けない……。絶対に………」
  ミラードグラーは一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐさまピンクマスクを睨みかえした。
  「そうこないとつまらん。では俺様の軽い運動相手になってもらおう」
  「その手を、は、な……しなさい」
  「ではいくぞ」
  ミラードグラーはキックをピンクマスクの胸や腹に打ち込んだ。
  「うっ!」
  オーラパワーが50を切った。
  「おりゃおりゃおりゃぁぁーー」
  ミラードグラーはたて続けて何度もけり続けた。1発決まるたびにオーラパワーが10ずつ減っていく。
  (うう、オーラパワーがもうなくなる……)
  ミラードグラーもマスクの数字に気がついた。
  「なんだ、この数字は? 答えろ」
  「うう、何でもないわ」
  「何でもないはずがないだろう。 言え」
  「だ、だれがあんたなんかに」
  「素直にいうんだ。でないといつまでもこのままだぞ」
  「だれが………だれがいうものですか」
  「言え!」
  またキックが一発決まった。
  「ああ………」
  残りが20を切った。
  「ほほう、ダメージを受けるたびに数字が減るようだな」
  「ああぁぁぁぁぁ………………………」
  ミラードグラーは舌で自分の唇をひと舐めした。
  「ではこうするとどうなるかな」
  そういいながらミラードグラーはピンクマスクを仰向けに寝かせ、彼女の両方の胸のふくらみを包みように握り、
もみ始めた。
  「きゃぁぁぁ、や、やめてーーー」
  ピンクマスクは頭を激しく振って抵抗した。パワーが今度はカウントダウンするように1ずつ減っていく。
  (ああ、もう、もうダメ……)
  「ほらほら、あと10だ、9、8、7,6,5,4……」
  「うう、はなして……」
  「ほらほら、3、2、1」
  「ああ……」
  そして0になった。ピンクマスクの全身に痙攣が走る。ミラードグラーはピンクマスクが動けないことを
確認すると、彼女をまたぐ格好で尻を落とし、腕を押さえつけてきた。
  「ぐっ!(なんておもいの……アイツ。)」
  「ほほう、これはおもしろい」
  ミラードグラーの目はピンクマスクの胸元にいった。そこにある五角形の紋章らしきものに目がとまった。
 「ふーん、これか。オーラパワー変換装置っていうのは。これがなければまたいつピンクマスクに変身されるか、
たまったものじゃないからなぁ。」
  ミラードグラーの左手をそこに移した。しかし、
  「素顔を見ておいてからでも、遅くはないか………」
  地底獣ミラードグラーの右手はピンクマスクのマスクのフックに手をかけ手際よくはずしていく。両方はずすのに
さほど時間はかからなかった。
  「素顔を見せろ!! ピンクマスク」
  地底獣の魔の手がマスクにかかる。
  「あ、あんたになんか……す、素顔を晒させはしない……」
  地底獣の腕をつかみ、必死に抵抗するピンクマスク。しかし、オーラパワーの切れた状態では到底太刀打ちは
できない。逆にミラードグラー痛恨の一撃が腹部に決まる。
  「きゃぁーーーー い、いやっ…」
  「所詮、小娘のお前に倒される俺じゃない。さあ、小娘…そのなまいきな顔を拝ませてもらおう……
フハハハハハハ………ハハハハハハ……」
  「うううぅぅぅぅ……(素顔を見られたら、もうピンクマスクに変身できない……)」
  「さあ、ピンクマスク、俺様に素顔を見せてくれ」
  「……お願い、もうやめて………」
  「その願い、聞き入れられないな。 ピンクマスク」
  ミラードグラーは指を突っ込むと、ヘルメットをはずすようにマスクを取りはずした。そこには涙が頬を
伝っているモモコの顔があった。長い黒髪がバサリと垂れた。
  「これがピンクマスクの素顔か」
  「地底獣………」
  「ただの女に戻った気分はどうだ」
  「ピ、ピンクマスクはもう負けたわ。 だから、もう許して………」
  「だめだ、これからだ 最後の仕上げだ。 オーラパワー変換装置をいただくぞ」
  ミラードグラーはふたたびオーラパワー変換装置に目がいった。また、モモコの体をまたぐように尻を落とした。
そして、胸元のオーラパワー変換装置を破りとった。
  「安心しろ」
  「………?」
  「殺しはしない。」
  「!?………どういう………こと?」
  もしかしたら………助かるかもしれない。ほんの少しだけ希望をとりもどしたモモコをあざ笑うかのように
ミラードグラーは続けた。
  「貴様に、見せたいものがある」
  と、遠くで何かが転がり落ちる音がした。
  モモコはうつろな瞳で、それを見た。
  黄色の強化スーツが目に入った。目に入れたくないものだった。そのものはモモコと同様に素顔を晒され
オーラパワー変換装置も奪われてしまっていた。体のくびれるさまから見て女性だ。
  「は……る……か……」
  まだモモコは助けを期待していた。
  二人は、目を閉じた。体は小刻みに震えている。もう、終わりだ。モモコとハルカは、完全に肉体も心も
完全に砕かれてしまっていた。彼女たちの心にはもう、恐怖と絶望しかなかった。

  勇敢な戦士から恐怖に打ち震える脆い乙女へと堕ちたモモコとハルカの、救いを求めるその声は、遠く離れた
場所で戦う仲間たちの耳に届くことはなかった………

  この後、二人は過酷な責めと悪夢に苛まれ続けることになるのである………。


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