帝國華撃団・花組の隊員、桐島カンナは、劇場が長期の休みに入った時、必ず故郷の沖縄へ帰る事にしている。
「自分の原点を見つめ直し、精神を鍛えなおすため」と、いつも大神隊長や他の隊員に話していた。
旅費が無いわけでは無いが、帰る時には貨物船などにふらりと飛び乗り、きままに旅をするのが常である。
そうすればならず者たちが自然に寄ってきて、カンナの格好の暇つぶしの的になるからである。
ただ、今度の旅ばかりは――そんな自分の慢心とも言える行為を、心底後悔することになるのである―――。


1、	船倉


「おい、あの女随分といいな」
「ああ、体は筋肉でゴツゴツだが、随分と綺麗な顔立ちをしてやがる――」
 船員に金をつかませて乗り込んだ連中が、カンナの事を口々に話している。
 人数は五人で、いずれも人相の悪い男達であった。
花組の中では体が大きく、野生的な外見が一際目立つカンナである。いかつい海の男たちの中に入っても、
体の大きさや鍛えぬかれた筋肉などは見劣りする事はない。
だが、やはり女優になれるほどの端正な顔立ちと、粗忽に焼いた男の肌とは違う綺麗に日焼けした肌は男たちの
眼を引いてしまう。永らく女を見ていない海の男たちにとっては充分に性欲を掻き立てられる存在だった。
「あの女、どこかで見たことがあるんだがな、誰かに似てないか?」
 時間の殆どを海で過ごす男たちの事である、舞台等の娯楽には疎い者達だ。
まして、カンナの事を一度は見ていても、まさか帝都で活躍する有名舞台女優が、こんな所に来るとは思うよしも無い。
「まさか、あんなガタイの女、一度見たら忘れねえぜ。それよりもだ、奴が寝静まる頃、こっそりとやっちまおうぜ」
「そいつはいい考えだ、長い航海で、溜まって仕方がねえぜ」
下世話な会話でひとしきり盛り上がった男達は、別の船倉でくつろぐカンナを夜這いに行くために綿密な準備を行う。
リーダー格と思われる男が作戦を告げる中、一人素知らぬ顔で奥で居眠りをする男が居た。
「おい、あいつは?」
リーダーの隣に居た男が、奥の男を指差して聞く
「ほっておけ、俺達だけで楽しんでくるぞ・・・」
部屋の扉を静かに開け、素早く移動する男達。
物音を立てる事無く、カンナの居る船室の前の扉を囲んだ。
リーダーが眼で合図すると、 四人は一斉に部屋に飛び込んだ

2、	廊下
 
 しばらくすると、部屋の中から鈍い音が聞こえてくる。
 蹴りの音、突きの音が、シュッ、シュッという風を切る音に紛れてテンポよく鳴った。
「あたいを闇討ちとは、いい度胸してんな。」
 暗がりの中から、長身のシルエットが浮かび上がると、倒れた男達を見て二ィっと笑う。
 
そのシルエットは、まるで青年のように鍛え抜かれた肉体に、女性特有の豊満な胸、その体に乗る小さくてバランスの
いい頭部という、何とも神秘的に見える不思議な美しさであったが、カンナに執拗に殴られた男達がそれを堪能する
はずもなく、ただ惨めに逃げ惑うだけだった。
「おいおい、ケンカ売っといて逃げんのかぁ?少しは楽しませてくれよ。」
 


カンナは、さらに男達に迫っていく、が、それ以上の事はしなかった。
「あたいは飯も食って満腹だし、とっても眠いんだよ、揉め事ならまた、明日にしてくんな」
 そうやって踵を返してベットに帰ろうとした時、背後から今までとは全く違う、異質な気配を感じた。
 「何の用だ?」
 カンナは振り返る事無く声を出す、だが、返答は無い。
「何の用だって聞いてるだろう!!」
振り向きざまに渾身の回し蹴りを打ち込む。間合いは一瞬のうちに計った、確実に相手の脳天を捕らえたはずであった。
だが・・・。

3、	対決
 
 
回し蹴りは、片手で受け止められていた。
「そ・・・んな・・・はずは・・・!」
 カンナは一瞬、その光景を信じる事は出来なかった。
だが、それは幻覚などではない、今まで避けられる事はあっても、渾身の回し蹴りを受け止められた事など
一度も無い。ましてや片手で下手に受けようものなら、腕の骨が折れてしまうくらいでは済まない。
それほど、この回し蹴りは威力のあるものなのだ、しかし目の前で、自分が見上げるほどの大男が、平然とした顔で
自分の回し蹴りを片手で受け止めているのである。
「いい蹴りだな。」
男が薄ら笑いを浮かべて、初めて口を聞いた。
寒気がするような不気味な声だったが、カンナは臆する事無く返した。
「へっ、当たり前だ!伊達にガキの頃から空手はやってねえぜ」
男はそれを無視するように、カンナの足をぐいっと押しのける。
「ぐわっ!!」
バランスを崩したカンナは、床に尻餅をつく。その姿を見ながら大男が、さらに近づいて間合いを詰めてきた。
「貴様・・・俺の女になれ」
「なっ・・・何だと!!ふざけんな!!」
突然の台詞に、カンナはたじろいだ。だが、すぐに態勢を立て直し、相手の股間に蹴りを繰り出そうとする。
しかし、その蹴りも男は巨体に似合わぬ素早さで後ろに避け、逆に攻撃してきた足に、
痛恨のかかと落しを食らわせた。
 「ぐっ!!」
もの凄く重い痛みが左足に圧し掛かり、苦痛に顔を歪めるカンナ、だが、彼女はそれを堪えて、必死に前に出て捨て身の
攻撃を打ち出した。
 相手の鳩尾に突きを繰り出す、が、その腕は軽く男に捕まれてしまったのだ。
「中々の技の切れだぜ、お前なら抱き心地が良さそうだ・・・」
 もの凄い力で腕を捕まれて、動きを封じられてしまう。カンナも必死に振りほどこうとするが、相手の腕はビクともしなかった。
「そ・・・そんな・・・あたいが力で抑え込まれるなんて・・・」
その直後、腹に鈍重な衝撃が加わった。
男はカンナの腹に、膝蹴りを食らわせたのだ。
「ぐ・・・ぐえ・・・」
男は力が抜けたカンナの胸倉をつかみ、空手着とタンクトップを怪力で引きちぎる。カンナの豊満な胸と、鍛え抜かれた
腹筋があらわになった。先程の膝蹴りで、腹筋は真っ赤に腫れ上がり、気力を無くしたカンナがぐったりと倒れていた。

4、陵辱
  「痛ッ!!」
 カンナが目覚めたのは、ものすごい痛さと苦しさの中だ。取り戻した意識の中で見た光景は、信じられないほど残酷だった。


「ううあっ!!こ、こんなっ!やっ!やめろーーっ!!!」
 
 
先程の大男が、カンナを力づくで抱きしめている、いわゆるベアハッグの状態だ。
そして、男の人間離れした大きさの一物が、カンナの女性器に突き刺さっていたのだ。
そのせいで、動くたびに痺れる様な痛さがカンナを襲い、強気な彼女も大声を上げて号泣した。
 カンナの腕は何とか男を振りほどこうとするが、もはやそんな抵抗は全くの無駄である。
「ああっ!!ううあっ!!痛い!!痛えっ!!助けて!!隊長〜!!」
ついに堪えきれず、最愛の人間に助けを求めるカンナ、しかし、その声が大神の耳に届く事はなかった。
そのうちにカンナの声が、蚊の鳴くようなか細い声になると、また体から力が抜けた。
生まれて初めて、男に貫かれて果てたのである。
「ふふふ、中々の感度だったぜ・・・明日も可愛がってやるから感謝しな・・・」
男は自分が満足すると、甲板に裸のカンナを投げ捨てた。
屈辱と恥ずかしさだけではない、複雑な気持ちで、カンナは涙を流す。
いつの間にか、甲板には豪雨が降り注いでいた。
「隊長・・・親父・・・みんなごめんよ・・・
あたい・・・汚れちまった・・・。」
 
 
虚ろな目で、カンナはいつまでも甲板に横たわっていた・・・。
                              完


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