小津麗 昼下がりの惨劇

それはいつもの買出しと変わりは無かった。特売品を求め幾つかのスーパーを巡
り
夕飯の食材を買い揃え家に帰る途中だった。麗の脳裏には食卓を笑顔で囲む兄弟
達
の光景が浮かんでいた。
その刹那、一瞬の閃光。地中から伸びた凶刃は麗の背腰から肝臓を貫き、そして
肩甲骨を破断し右肩から飛び出していた。麗の柔らかく艶かしい肢体は、文字通
り
串刺しとなっていた。
「がっ?げう・・・、ぎぃ」
何が起こったのか、麗にはすぐには分からなかった。痛みは無かった。あまりに
も
俊敏な太刀筋だったのである。
「こんな小娘、私が出る幕も無かったのではないかな」
それは冥界随一と呼ばれる暗殺者ウィンビラであった。
「じゃあね、さようなら」
一気に刃を引き抜き去っていくウィンビラ。
「ばっ、はっぅ、がばっ」
突然の激痛。そして止め処なく流れ出す血。糸の切れたマリオネットのように
崩れ落ちる麗。もはや呼吸すらままならなくなっていた。
「こ、こんなところ・・・で・・・」
薄れゆく意識の中、麗は最後に一筋の涙を垂らし息果てた。




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