開戦前夜(1)

  ようやく、インフェルシアとの戦いが終った。支配者(絶対神ン・マ)が倒れ、冥府神スフィンクスの下、
インフェルシアの再建が始まっていた。恐怖による支配ではなく、平和的な統治が・・・。
封印は解かれ、魁は親善大使として何度もインフェルシアを訪れていた。

芳香は”数日後に麗とヒカルが帰って来る”という連絡を受けて、パーティの準備に走り周っていた。
以前は麗が総てやってくれたが、今ではすっかり芳香の仕事になっていたのだ。
ワインを買って帰路を急ぎながら、芳香は戦いの後の事を色々と想い出していた。
宿敵ナイ&メアとの和解、冥獣の地上界への侵入禁止、交換条件のレジェンドパワーの封印等など・・・
(でも、平和になって良かった・・・アフロ君、これで良かったんだよね・・・・・・)
そんな事を思いながら、すっかり暗くなった道を歩いていた。と、その時、
「キャァァァ!誰か、助けてぇぇぇ!」
近くで悲鳴が聞こえた。誰かが何かに襲われている!でも、冥獣のいない今、一体何に・・・・?
人気の無い廃材置き場で芳香は観た!霧の様なモノに包まれて消えてゆく女性の姿を!
「待ちなさい!マージ・マジマジーロ!桃色の魔法使い、マジピンク!」
マジピンクが近づくと、霧はマジピンクに襲いかかった。身体を包み込まれて呼吸が出来なくなった。
「クククッ。始めまして、桃色の魔法使い。私の名は悪魔ファントム。さて、早速だが貴様には
一緒に着て貰おう。」
「あ、悪魔?!冥獣人じゃないの?・・・うくぅぅぅ!かはぁぁぁぁ・・・い、息がぁぁぁ・・・・・・」
マジピンクは霧の中で喉を押さえて身悶え、遂に倒れてしまった。その身体が少しずつ消えてゆく。
「おやすみ、マジピンク。目が覚めたら、また遊んであげよう。ククククッ。」
その声を聞きながら、意識が真っ白になりマジピンクは気を失った。その身体は霧と共に消えてしまった。



「・・・・・ううっ・・・・こ、ここは・・・・うくっ!ああっ、こ、これは・・・私、一体・・・・・」 
薄暗い洞窟の中でマジピンクは目を覚ました。手足は台に固定されてどんなにもがいても、ピクリとも
動かす事は出来なかった。
周りには、冥獣の遺体が幾つも転がって、まるで死体置場の様だ。
「おはよう、マジピンク。よく眠れたかね。クククッ。」
「あなた、一体何者?悪魔って言ってたけど、どういう事なの?」
マジピンクは現れた霧に向って言った。敵の正体が全く判らなかった。インフェルシアとは、もうとっくに
停戦になっている。
コイツが仮に冥獣人だとしても、その狙いが判らない。こんな事をしたら、最悪の場合また戦いになると
いうのに一体何故・・・
「・・・この世の土産に教えてやろう。我々はインフェルシアの少数民族、悪魔族だ。遥か昔、
インフェルシアを支配していたが、(冥獣帝ン・マ)によって封印された。しかしヤツが死で封印が解け、
復活したと云う訳だ。インフェルシアを再び我等のモノにする為、もう一度スフィンクスとキサマ等の間に
戦争を起こす。そして、今回は共倒れになってもらい、我々は故郷に還る。
その為にマジピンク、お前には死んで貰う。魔法使い共が怒り狂う程の飛びきり無惨な死に方でな。」
ファントムはそう言うと、ゴリラの様な冥獣の遺体に霧の様な身体を包み込んだ。すると、冥獣の遺体(亡者)が
動き始めた。
「我々は身体を持っていない。必要な時は、こうして脱け殻に入って行動する。さっきの様にな。クククッ。」
あの女性は、死体を使ったただのオトリだったのだ。マジピンクを誘き出す為だけの・・・
「さあ、マジピンク。死んで貰うぞ。と、その前に、オマエの悶え苦しむ顔が観たい。そのマスク、
取らせてもらうぞ。」
数体の亡者がマジピンクのマスクを物凄い力で殴り始めた。殴られた所はヒビが入り無惨な姿になって行った。
「うがっ!ぐふっ!がはっ!や、やめてぇ!ひゃあ!むぐっ!うぎぃぃぃぃぃぃ!ぎ、ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
一体の亡者がヒビ割れたマスクを両手で掴むと、一気に握り潰した。潰れたマスクの中から、血まみれの芳香の
素顔が現れた。
涙を浮べ、口や鼻からは血を流し、美しかった髪は血で汚れ乱れていた。美しく整った顔は破片で
ズタズタになっていた。
「クククッ。イイ表情だ。では、これよりマジピンクの解体を行なう!愉しませてもらうぞ、魔法使い!
まず、腕からだ。」
亡者達はノコギリを持つとマジピンクの手首に刃を当てた。ヒイッ、という芳香の悲鳴を合図にブチブチと
音を立てて、その刃を引き始めた。
「ギャアァァァァァ!い、痛いぃぃぃぃ!痛いよォォォォ!ヒギィィィィィ!ヤメテェェェェェ!
手が、手がぁぁぁぁぁぁ!」
ゴトッ、と音を立ててピンク色の手首が床に転がった。マジピンクは激痛の余り身体を反らそうとするが、
固定されているので頭を激しく振るしか無かった。痛みと恐怖に震え、涙が止まらなかった。
「うあぁぁぁぁぁ・・・・止めてぇ・・助けて・・・何でもする・・・ギャアァァァァァ!助けてぇ!
助けてぇ!助けてぇ!ヒギィィィィィィ!」
間欠泉の様に血を噴き出し続ける手首の次はヒジの関節が真赤な血を噴き出し、斬り落された。まるで子供に
イタズラされた人形の様な姿だ。
「これで腕は終りだな。イイ声で鳴いてくれよ。」
亡者達は、マジピンクの残った腕を掴み引っ張り始めた。肩の関節を引き千切るつもりだ。関節がバキバキと
不気味な音を立て始めた。
「グギャァァァァァ!ヤベデェェェェ!千切れるぅぅぅぅぅ!ウデッ、ウデッガァァァァァ!
グギャアァァァァァァ・・・・・・・・・・」
肩をもぎ取られるれると同時にマジピンクは激痛の為に失神してしまった。腕が無くなり、口からは、涎と泡を
垂れ流し白目を剥いて気絶した
芳香の姿は、モデルをしていたとは思えない程、無惨な姿だった。
「クククッ。さあ、起きるんだマジピンク。オマエのショーはまだ終らんぞ。」
マジピンクの足首にオノを当て、それを一撃で斬りおとした。
「・・・・・・ギャァァァァァ!イガギィィィィィィ!ヒィヒィヒィヒィ!」
マジピンクはあまりの激痛に目を覚ました。出血の為か顔は真っ青になっていた。
「・・・うあぁぁぁぁ・・許してぇ・・・何でも・・言うこと聞きます・・・だから・・・」
芳香はファントムに命乞いを始めた。ここまで耐えたのが不思議な位だった。腕が無くなり足首も
無くなった。22才の女性は耐え切れるハズが無かった。
「お願いぃ・・・助け・・ギャアァァァァ!痛いぃぃぃぃぃ!ヒイィィィィィ!脚がぁぁぁぁ!
脚がぁぁぁぁぁ!」
芳香のヒザを斬りおとしファントムは言った
「オマエには死んで貰うと言っただろう。言う事を聞く、と言うのなら命令は死ね、だ。」
亡者達は手足を斬りおとしたマジピンクを床に転がすと、残った太腿を掴むと力を込め、両方に裂き始めた。
「ピギャァァァァァ!さ、裂けるゥゥゥゥゥ!やめてぇぇぇぇ!死ぬゥゥゥ!死んじゃうよォォォォォォ!
アガガガガガガガガガ・・・・・」
ベキッ、と音を立てて、マジピンクの残った両脚は2つのパーツになってしまった。股間節を砕かれ
マジピンクはもうバラバラ死体同前だった。
「うあぁぁぁぁ・・・・死にたくないよぉぉぉ・・・・麗ちゃん・・助けてぇぇぇぇ・・・・・・
うぇぇぇぇ・・・・」
まるで美術の胸像の様な姿でピンク色のスーツを着けた身体を痙攣させていた。
「よし、仕上げだ。生き返られると困るからな。」
ファントムは芳香の頭を掴むと、一気にもぎ取った。



 小津家に届いた荷物を開けた麗は、悲鳴を上げた。木箱の中にバラバラのマジピンクがキレイに
詰められていたからだった。
その箱にはマジスーツを着けたままの芳香の身体が手、脚、胴に分かれて詰められていた。兄弟達は
芳香を生き返らせる為にインフェルシアからナイとメアを呼び寄せた。だが生き返らせるのは不可能だった。
そこには、頭部が無かったからだ。
「頭が無い状態で生き返らせても、理性と知力の無いゾンビにしかならないの。そんな芳香、アタシ見たくない!」
「見たくない!それより頭を捜して!」
マジピンクの身体はバラバラの状態で、木箱に収められたままだった。


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