白虎、叫ぶ!                
                          
 ハイネスデュ−ク・ラセツのいないマトリックスでヤバイバとツエツエは、途方に暮れていた。
自分達が仕えるべき主が、自分達を全く相手にもしていないのだ。何としても気に入られなければ、
自身の存在意義にも関わる。どんな手段を使ってでも、お気に入りになる必要があった。
しかし、ラセツの今のお気に入りは自分達と同じ(デュークオルグ)のプロプラとキュララであり、
戦闘能力では、勝ち目は無い。 二人には、絶対に真似の出来ない方法で、ご機嫌を取るしか無い。
だが、どうすれば良いのか・・・
 「ちょっと、ヤバイバ!どうするのよ!このままじゃ二人とも、お払い箱よ!なにか名案とかないの?」
 「名案ってオマエ!そうゆうのはツエツエ、おまえの担当だろ!オレは、肉体労働担当なんだよ!
頭脳労働は、オマエの担当!」
 何時間もこんな問答を繰り返していた。その時、ふとヤバイバがぼそっと言った。
 「この前、喰い逃した饅頭、喰いてぇなぁ・・・」
 「こんな時に何を言って・・・って、それよ!その手が有ったわ!」
 ツエツエは、名案を思い付いたが、ヤバイバは、首を傾げるばかりだ。
 「分かんないの?ラセツ様の食べられ無かったモノを、食べさせて差し上げればいいのよ!」
 「た、食べられなかったモノって、なんだよ?」
 何の事だか、ヤバイバには、さっぱり要領を得ない。
 「フフフッ。白ダンゴよ。シ・ロ・ダ・ン・ゴ。フフッ。」
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 今日の買物を一人で済ませ、冴は機嫌がとても悪かった。今日に限って誰も手伝ってくれない。
と言うより、気が付いた時には、もうテトムしか居なかった。仕方なく一人で買物に出たが、
一人の時に限って荷物は重かった。
 「もう!か弱い女の子に、こんなに荷物持たせて!帰ったら、タダじゃ済まないんだから!」
 ブツブツ文句を言いながら、帰り道を歩いて行った。いつもの角を曲がると、広大な造成地が目に入った。
今は更地だが、いずれ高層ビルが幾つも建つそうだ。複雑な心境だった。人間がこんな事を・・・
 「私達がやるより、人間の方がこうゆうの得意ねぇ。」
 声の方を振り返ると、見覚えのある姿があった。オルグだ。
 「ヤバイバ!ツエツエ!」
 「オルグを倒すより、人間を全滅させた方が早いんじゃないの?」
 気にしている事を言われて、カッとなった。自分達のしている事を棚に上げて・・・・!
 「うるさい!今日こそ倒してあげるわ!ガオアクセス!ハッ!」
 大河 冴は、一瞬にして純白のガオスーツに身を包みガオホワイトに変身した。
 「麗しの白虎!ガオホワイト!二人とも覚悟しなさい!」
 「あら?お嬢ちゃん、一人でいいの?ほかの連中に助けてもらわなくちゃ、勝てないわよ?」
 ただでも腹立たしいのに、ここまでバカにされては、プライドが許さない。二人とも倒してみんなを
見返してやろうと思った。
 「あんた達なんか、私一人で十分よ!いくわよ!ハッ!」
 タイガーバトンを構え、ツエツエとヤバイバに向かって行った。
 「フフッ。まずは、コイツらが相手よ。オルゲット!」
 ゾロゾロと兵隊オニ、オルゲットが湧いて出て来た。棍棒を持ち、ガオホワイトに襲い掛かって行くが、
次々にタイガーバトンの餌食になって行く。ほとんどのオルゲットを倒した時、ガオホワイトは気付いた。
 (いつもよりオルゲットが多いだけで、オルグがいない!大丈夫、いける!)
 多少の疲労感を感じながらも、オルゲットの山を背にガオホワイトがツエツエ達を見据えた。
後はこの二人だけだ。
 「さあ!後はあんた達だけよ!覚悟!」
 バトンを手にガオホワイトは、ツエツエに跳びかかった。だが、ツエツエの杖から電撃が放たれ、
 その華奢な身体は爆発と共に何メートルも吹きとばされた。純白のスーツが焼け焦げ、煙をあげていた。
(きゃああぁ!うぐううぅ・・あぁぁぁ・・・)
 いつもよりも強力なパワーにガオホワイトは地面をのたうち回った。ガオスーツを突き抜け、
身体にもかなりの痛みが伝わった。
 (そ、そんな!ツエツエが・・こんなに強いなんて・・・)
 黒く焼け焦げた胸のエンブレムを押さえ、よろよろと立ち上がった、その時だった。
 「ヒャア!タァ!タァ!オリャ!トリャ!」
 物凄いスピードでヤバイバが斬り付けてきた。
 「キャア!うあぁ!ヒイィ!イヤァァ!ぐあぁ!」
 剣道には自信が有ったが、太刀筋がまったくみえない。肩、腕、腹、太腿とみるみる斬られていった。
 「おやすみ。お嬢ちゃん。次に目が覚めた時は、ビックリするわよ。」
 ズタズタにされ、倒れる瞬間、最大出力の電撃がツエツエから放たれた。
 「ぎゃぁぁぁ!し、死んじゃうよぉ!うぎゃぁぁぁぁ・・・」
 ガオホワイトは(オルグ)より上の(デュークオルグ)の実力を思い知りながら、意識を失った。
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 光も届かない地底深くのマトリックスでガオホワイトはちょうど大の字型に手足を縛られて
捕えられていた。上から両手を吊るされているため、地面から50センチ程宙吊りになっている。
スーツはほぼ無事だが、マスクは電撃で破壊され、無残に砕けて足元の転がっていた。
 (ううぅ・・ここは・・どこ・・?)
 「お目覚めかしら?ふふっ。気分はどう?」
 ツエツエが現れ、冴の黒髪撫でながら言った。不安を隠しながら冴は、ツエツエを睨んだ。
 「私をどうする気?人質にしても無駄よ!ガオレンジャーはそんな事じゃ負けないわ!」
 「人質?ふふっ。じゃあ、教えてあげる。オマエは今回のメインディシュになるのよ。」
 「メ、メインディシュ?何の事?何を言ってるの?」
 何の事か理解できずに冴は不安を隠せなくなった。人質にはしないと言っていたが・・・
 「もうじき分かるわよ。うふふふ。」
 その言葉が終わると同時にヤバイバと体中に口のある化物が入ってきた。(ハイネスデューク)ラセツだ。
 「おおっ!本当に白ダンゴではないか!ワシは喰い逃しは大嫌いでな。絶対に喰うと決めておったのだ。」
 男の声で興奮しながらラセツは言った。以前、食事の邪魔されたのが余程悔しかったようだ。
 「はい。活きの良いうちに、存分に味わい下さい。どの様に料理致しましょうか?」
 コック姿のヤバイバはナイフとフォークを手にラセツに聞いた。実際には料理は、自信が無かったのだが。
 「そうねぇ。丸焼きもイイし、フライもイイわねぇ。どうしましょう、迷っちゃう。」
 ヤバイバとラセツの会話を聞き、冴は愕然となった。ラセツはガオホワイトを食べようとしている!
私が食い殺される!
 「やめて!私、食べ物じゃない!ガオホワイトよ!食べるなんてウソでしょう?」
 顔面蒼白になり、冴は懇願した。恐怖で脚の震えが止まらない。前はガオレッドに助けられたが、
今度こそ助けは来ない。
ラセツがマスクをバリバリ喰いながら(ガオホワイト)に言った。
 「何を言ってるの。お前は今日の食材よ。せいぜい美味しい悲鳴を聞かせてもらうわよ。うふ、決めたわ。
踊り喰いにするわ!」
 そう言うや否や、ラセツは吊るされたガオホワイトに全身の口でかぶりついた。ガオスーツが食い破られ、
白いスーツが血塗れになり、骨と肉を喰いちぎられた冴の絶叫が響き渡った。全身は、痙攣を始め、
涙と悲鳴が止まらなかった
 (ブチィ!バリィ!メキメキメキ!ゴリュ!グチュ!ボリボリボリ!)
 「ぎゃああああぁぁぁ!痛いぃぃぃ!ヤベデェェェ!食べないでェェ!ギエエェェェェ!」
 ヒジやヒザの関節に喰い付かれ、ガオホワイトの手足が有りえない方向に人形の様にブラブラと
動きはじめた。
 (ゴリゴリゴリ、メキメキ、ボキッ!)
 「フギャアァァァァァァ!手が、手がぁ!イヤァァァァァ!やめてェェェ!ウギャァァァァァ!」
 ヒジに続いてヒザも食い千切られ鮮血が噴水の様に噴き出していた。ガオホワイトはラセツに
抱き締められる様に全身を喰われ、まるでダンスを踊る様に苦るしみ続けた。肩の筋肉や神経を噛み切られ、
腕の肉を食い千切られ、指を噛み千切られ呑み込まれる。発育途中の胸は両方とも乳房をスーツごと
喰い千切られ、跡形も無くなっていた。ラセツの腹部の口がガオホワイトの柔らかな腹筋を
ガオスーツごと食い破り、臓器が見る見る口の中に消えて行った。
 「グブゥゥゥゥ・・・やめてぇぇぇ・・・・ゆるしてぇぇぇぇ・・・死にたくない・・・・・
死にたくないよぉ・・・」
 内臓も喰われてしまい、下腹部からは腸や子宮、膀胱が噛み潰されていった。純白に輝いていたスーツは
すでに血で真赤に染まっていた。
 全身が真赤に染まり、(麗しの白虎)では無くなり、ただの(死掛けの残骸)となった冴は身体を痙攣させ、
ラセツに身を任せる事しか出来なかった。
 「フハハハ!白ダンゴが赤ダンゴになりおったわ!ハハハハ!」
 スラリと伸びていた両足は腿が骨だけとなり、膝から下は、ブーツごと下に落ちていた。
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 わずか数分で、(麗しの白虎)ガオホワイトは頭部と骨だけの無惨な姿にされ、もう、虫の息だった。
 (早く・・助けてぇ・・・・・みんなぁ・・・いたい・・よぅ・・)
 こんな姿になっても、冴は、助けが来ると信じていた。




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