メタメタ!! 激獣 チーター拳、敗れる!!       
 
ケモノの様な雄叫びと共に、地面に一本の(杭)が打ち込こまれた。だが鮮やかなイエローのそれは、木でも鉄でもなかった。
鍛え上げられているが、美しい曲線で構成されたラインはそれが女性で在る事を示していた。
「激獣チーター拳の使い手と聞いたが、たいしたヤツでは無いな。全く歯応えが無い。所詮は女か、つまらん。」
臨獣クロコダイル拳の使い手、アビガルは頭から胸元まで地面に突き刺さったゲキイエローを眺めながら言った。
「ニワの奴がやられたと云うから、どんなツワモノかと思えば、一人では、まるでザコだな。こんなヤツらの何処が怖いんだ?」
ゲキイエローの両脚を掴むと地面から力任せに引き抜き、放り投げた。
「ぐあっ!・・・・ううっ・・・つ、強い・・・」
立ち上がったゲキイエローの、チーターをモチーフにしたのマスクがバラバラになって足下に砕け落ちた。
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日課であるトレーニング中に宇崎 ランは突然、臨獣拳の挑戦を受けた。
「オレは臨獣クロコダイル拳のアビガル。貴様らに倒されたニワの仇を討ちに来た!一対一でオレと勝負しろ!」
少し危険な気がしたが、一対一での勝負と言われては、拳士として受けない訳には行かなかった。
「いいわ!相手をしてあげる!滾れ、獣の力!ビースト、オン!」
ランの身体にスーツとマスクが装着され、ランは(ゲキイエロー)に変わった。
「オネスト・ハート!ゲキイエロー!いくわよ!ハッ!」
まさしくチーターの様なスピードを活かし、ゲキイエローは一瞬でアビガルの懐に跳び込む!
「行くわよ!ハッ!ゲキワザ、打打弾!ハァァァァァァ!」
疾風の様なスピードの拳が何発もアビガルの全身に寸分の狂いも無く打ち込まれて行く。あまりのスピードに
アビガルは反撃もできず、無抵抗のままゲキイエローの攻撃を受け続けた。
(打打弾のスピードに付く来れていない!速攻で攻めれば、勝てる!)
一旦アビガルから距離を置き、全身の激気を込めて全力で必殺の拳を打ち出す。
「これでフィニッシュよ!ゲキワザ!貫貫弾!ハァッ!」
今まで以上の凄まじい火花を上げ、アビガルの腹部にゲキイエローの拳が打ち込まれた。
「・・・・・激獣チーター拳とは、この程度か。とんだ期待外れだな。」
「そ、そんな・・・・貫貫弾が効かない?!間違い無く決まったハズなのに・・・・キャアァァァァ!!」
アビガルはゲキイエローの腕を掴むと、その身体ごと地面に叩きつけた。
今まで全力で修行に励んで来た。それは若い女性ながら激獣チーター拳を使いこなすと云う事で実を結んでいた。
その姿勢が間違っていない事は、五毒拳のカデムとの闘いでも証明された。だが、それが通用しない。
以前、クロコダイル拳のニワにはゲキレンジャーの攻撃が効かなかったが、全力の激気を一点に込めた一撃を、
いわゆる(鳩尾)に打ち込まれれば、無事では済むハズがない。だが、その必殺の一撃が効かない。
「それでは、こちらの番だな。ウラッ!!」
アビガルは倒れたゲキイエローの左脚を踏みつけた。ベキッ、と言うと共にゲキイエローの悲鳴が響き渡った。
「ギャアァァァァァァ!・・・あ、脚がぁ・・・ううっ・・ぐぁぁぁ・・・・・」
一撃でゲキイエローの左足は不自然な向きに折れ曲がり、動かなくなっていた。
「次はこれだ!くらえ、泥州胴折り・改!」
脚を押えのたうち回るゲキイエローの首を掴み、アビガルはゲキイエローの身体を持ち上げた。
「うあぁっ!!は、放して!放せ・・ぐあぁぁぁぁぁ・・・・・・グギャアァァ!!」
ゲキイエローの身体を締上げ、回転しながら高くジャンプすると凄まじいスピードで落下し、地面に激突した。
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かなりのダメージを受け、素顔を晒したゲキイエローは、全身にチカラを込め、なんとか立ち上がると
先程のダメージで機能の低下したボロボロのスーツのまま、再び撃気を高め始めた。
「ムゥ?!懲りんヤツだな。一度では実力の差が判らんと見える。まあ、活きが良い方が愉しめるか。」
ランは苦痛に顔を歪めながら、全身の撃気を最高まで高めた。(過撃気)と言われる究極の域まで。
「はぁぁぁぁぁぁ!スーパービースト、オン!スーパーゲキイエロー!」
ボロボロだったゲキイエローは光り輝く、神々しいスーパーゲキイエローへと変身を遂げた。
だが、マスクを失い傷だらけの素顔と、折れた脚は治癒させる事は出来ず、傷ついたままだった。
(このままじゃ、全力で走れない・・・でも、これなら、・・・行ける!)
スーパーゲキイエローは拳に全身の(過激気)を込め、先程の一点・・・鳩尾を文字どうり(貫く)為、
スーツ背面のダクトからジェットの様に(撃気)を噴出しながら高速で一気にアビガルに突撃した。
「ハアァァァァァ!ゲキワザッ!スーパー貫貫打!」
スーパー貫貫打の決まったアビガルの腹部からは、その威力の為に大爆発が起き、二人の姿が見えなくなった。
やがて、爆発が収まるとアビガルの腹部にスーパーゲキイエローの拳が決まっていた!・・・・だが。
「・・・・う、うあぁぁぁぁ・・・・・そ、そんな・・・こんな事・・・・」
スーパーゲキイエローの拳がアビガルの装甲を打ち抜けず、逆にメチャメチャに粉砕されていた。
「フン!全く懲りんヤツだ。その程度の力押しがオレに通用するものか。さて、こちらの番だな。・・・ウリャァァァ!」
アビガルはスーパーゲキイエローの拳の砕けた右腕を掴むと、ヒジから一気に捻じり上げた。
関節がメキメキと悲鳴を上げ、腕は凄まじい力によって在り得ない方向を向いて回り続けた。
やがて、バキッ、と音と立ててスーパーゲキイエローの右腕の関節は無惨に破壊されてしまった。
ヒジ関節は粉々に粉砕され、右腕が黄色のスーツとランの筋肉と皮膚で辛うじて繋がっていた。
元来、ワニは顎の力でエモノの骨を砕き、回転させて食い千切る、と云う方法で相手の身体をバラバラにするのが
その狩りのスタイルだ。臨獣クロコダイル拳もその攻撃が主な戦闘スタイルだった。
「まずは・・・・・その腕、貰い受ける!ハッ!」
ヒジを破壊され、動かないスーパーゲキイエローの右腕をアビガルは更に勢い良く捻り続けた。
ブチブチッ、と音を立ててゆっくり回り続ける腕。まるで、別の生き物の様にビクビクと右腕は痙攣し始めた。
激しくブンブンと頭を左右に振り、眼を血走らせてまさしくケモノの様な悲鳴を上げるラン。
「いぎゃぁぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!い、痛いぃぃぃぃぃ・・・・・ヒギャァァァ!」
やがてバキッ、と云う凄まじい音と共に、スーパーゲキイエローは倒れ、右腕を押えて地面を無様にのたうち回った。
「ギャアァァァァァ!う、腕がぁぁぁ!私の腕がぁぁぁぁ!い、イヤァァァァァァ!」
アビガルは、黄色い塊を掴み、悲鳴を上げ苦しむスーパーゲキイエローを満足そうに眺めていた。
鮮血が流れ出すそれは、無惨にもぎ取られたスーパーゲキイエローの右腕だった。
ピクピクと瀕死の魚の様に痙攣し、ボタボタと血を垂れ流す(ソレ)をアビガルは一気に握り潰した。
ヒジから下をもぎ取られ、ゲキチェンジャーを失い、スーパーゲキイエローはボロボロのゲキイエローに戻ってしまった。
「さあ、次は如何してくれよう。・・・うむ、次は足だな。」
地面を這いずり逃げようとするゲキイエローを見下ろすとアビガルは言った。左足を踏み付け、逃げられなくするアビガル。
普段の姿からは信じられない程無様に逃れようと、必死にジタバタと暴れ、のたうち、這い回るゲキイエロー。
ランの(オネストハート)は完全に砕け散ってしまった。心の支え、いや獣拳チーター拳の存在その物だった拳。
絶対に負けないと信じていた撃獣拳が、想像さえしなかった無惨な姿でアビガルの手に握られ、ゴミの様に投げ棄てられた。
もう、拳を打つ事も出来ない。今までの全身全霊を賭けた厳しい修行が、一瞬で意味の無い物になってしまった。
全てを激獣拳に打ちこんで来たランにとって、それは自分の存在が無意味な物になってしまった事と同じだった。
「い、いやぁ・・・・やめて・・・・ぐっ!うあぁぁぁぁぁ!ひぃぃぃぃ・・・やめてぇぇぇ・・・」
アビガルは折れた左足を凄まじい力で、ブチブチッと捻り切る。ゲキイエローのヒザ関節が引き千切れ、鮮血を噴きだす。
まだビクビクと動く、もぎ取った左足も無造作に投げ棄てた。反射神経の反応だけで跳ね回り、やがて動かなくなる左足。
「い、いやぁぁぁぁ・・・助けてぇぇぇ・・・・お願い・・・・・やめ・・ギャアァァァァァァ!」
悶え苦しむゲキイエローの左肩を踏み付けて、凄まじい力で左腕を後ろへ捻り上げた。不自然な形に引き伸ばされ左腕。
ゴキッ、ベキッと関節から不気味な音を立て、仰け反り、異様な姿を晒して悲痛な喘ぎ声を上げるゲキイエロー。
やがて肩の関節が限界を越え、左腕が根元からスーツごと引き千切られる。脳の制御を失った指が、握ったり開いたりして
不気味に動いている。そのワニの様な残酷さで、アビガルはゲキイエローをジワジワと、しかし確実に無力にしてしまった。
そこには、既に鍛え上げられた手足を失い、激気を生みだす事すら出来なくなってしまった、憐れなチーター拳の女拳士がいた。
「あ、うあぁぁぁぁぁ・・・・・助けてぇぇぇぇ・・・・殺さないでぇ・・・・お願いぃぃ・・・・」
完全に心が砕け散り、ゲキイエローはタダの無力な女性でしか無くなってしまった。涙を流して命乞いをするランの髪を掴み上げ、
アビガルは心を粉砕され、ゲキイエロー(だったモノ)に恐ろしい宣告を言い放った。
「貴様には、まだまだ苦しんでもらうぞ。我等、臨獣殿の為に貴様の悲鳴と絶望、役立ててもらうとしよう。」
あまりの恐怖に、ガクガクと震えながらランは、弱々しい声で命乞いをし続けた。
「い、いや・・・お願い・・・・許して・・・・助けて・・・・許してぇ・・・・・」
両腕をもぎ取られ、両足も失い、無惨な姿になったゲキイエローを手土産にアビガルは臨獣殿へと戻っていった。
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数日後、臨獣殿からゲキイエローの居場所が伝えられた。そこでゲキレンジャー達が見た物は、想像を絶する光景だった。
それは素顔を晒し、ヒジとヒザを斬り落され、モゾモゾと蠢くゲキイエローの姿だった。その眼は光を失い、何も映ってはいなかった。
それは正気を失っている事を強烈に、そして残酷に物語っていた。その後ろには臨獣殿からのメッセージが立札で残してあった。
(ウジムシ拳の使い手、ゲキイエローの模範演舞)
「うえぇぇぇぇ・・・・・・・うえぇぇぇぇ・・・・・・うげぇぇぇぇ・・・・・・・」
あまりの光景に身動きすら出来ないゲキレレッドの目の前で、ボロボロのイエローのスーツを着け、ダラダラと涎を垂らしながら、
完全に心が壊れてしまった(宇崎 ラン)は呻き声を上げ、正にウジ虫の様にモゾモゾと地面を蠢き続けていた。
                        




                        END

 




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