オレル ツバサ
                 

油断しているプライベートを襲う、という作戦を立てたガイアークだったが、
ゴーオンゴールドに奇襲を掛けるも、バキュームバンキは全く歯が立たない。
やむなく害気大臣キタネイダスは、ターゲットをゴーオンシルバーに変更した。
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ゴーオンシルバー=(須塔 美羽)は走輔を街中連れ回していたが、
流石の走輔も、美羽の言い様に怒り出し、置き去りにして帰ってしまった。
ブツブツと文句を言いながら、街中を歩く美羽の後ろを,物陰から物陰へ
隠れながら、コソコソと後を追うバキュームバンキ。
ゆっくり距離を詰めて行き、美羽が曲り角を曲った。チャンスだ!
「ようやく一人になったでキューム。ここでイッキに!・・・って、あれ?」
美羽を追って角を曲がったバキュ−ムバンキは、その姿を見失った。
「アナタが追っている事なんて、お見通しよ!チェンジソウル!」
キョロキョロとするバキュームバンキを指差すと美羽は変身した。
「メットオン!いくわよ!!」
ゴーオンシルバーはロケットダガーを引き抜くと、素早く構えた。
「うわ〜!ゴメンナサイ!!許して欲しいでキューム!」
突然、膝を折るとバキュームバンキは、ペコペコと土下座をして謝り始めた。
蛮機獣の予想外の行動に、流石のゴーオンシルバーも困惑した。
半年も激しい訓練は積んでいたが、こんな行動は想定もしていなかった。
そして一瞬の隙は、時に致命的な結果をもたらす。
「ズズズ、ズイズイズッコロバシ〜!喰らえっ、バキキキ!」
バキュームバンキは立ち上がり、腕のノズルをゴーオンシルバーに向ける。
ノズルが凄まじい吸引力で、辺りの物を吸い込み出した。
「うあっ!・・・す、吸い込まれる?!・・・くううっ・・・キャアァァァァ!!」
必死に耐えていたゴーオンシルバーだが、遂にノズルに吸い込まれてゆく。
頭が吸い込まれ、両腕をジタバタと悶えるが、肩から徐々にノズルの中へと
消えてゆく。やがて両足をバタつかせながら、完全に吸い込まれてしまった。
悲鳴を聞いた走輔と、嫌な気配を感じたゴーオンゴールドが到着した時、
そこには、ゴーオンシルバーのロケットダガーだけが残されていた。
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気を失ったまま、ヘルガイユ宮殿まで連行されたゴーオンシルバーは、
バキュームバンキの圧縮ダストパックから出された。
「でかしたゾヨ!念の為に逃げられぬよう、ちゃんと縛っておくゾヨ!」
キタネイダスの指示通り、ウガッツが手足に特殊合金の枷を掛けてゆく。
ゴーオンシルバーは三大臣の前にX字に吊るされてしまった。
「さて。さあ!起きるゾヨ、ゴーオンシルバー!」
キタネイダスがスイッチを押すと、ゴーオンシルバーに電流が流された。
「キャアァァァァ!・・・う、ううっ、・・・ここは・・・・が、ガイアーク?!」
電撃で覚醒させられたゴーオンシルバーは、目の前の光景に驚愕した。
蛮機獣ならまだしも、ガイアークの幹部が全員顔を揃えているのだ。
ゴーオンゴールドの居ない上に完全に身動き出来ない今、勝算は無い。
ここはチャンスが訪れるのを待つしかなかった。
「これでは、ゴーオンウイングスと言えども、手も足も出ないナリ!
今日こそキサマの最期ナリ!覚悟するナリ!」
前回、副大臣のヒラメキメデスと共に屈辱を受けたヨゴシュタインは、
まさに怒り心頭、アタマの煙突から勢いよく黒煙を噴きながら、
今この場でゴーオンシルバーを処刑してしまいそうな勢いだった。
「御待ち下さい、ヨゴシュタイン様。私に策がございます。」
激怒するヨゴシュタインをヒラメキメデスを諌めた。
「ゴーオンシルバーを使い、全ての炎神共のココロを折ってしまうのです。
勿論、ゴーオンゴールドやゴーオンジャー共も一緒に、です。」
ヒラメキメデスは額の三つのランプを点滅させながら、自らの計画を語った。
落ち付いてきたヨゴシュタインの、煙突の黒煙が少なくなって行く。
「・・・うむ、分ったナリ。お前に任せるナリ!」
「有りがたき幸せ。キタネイダス様、私にお任せ戴けますか?」
ヒラメキメデスは深々と頭を下げた。
少しの間考えると、キタネイダスは頷きながら言った。
「・・・フ〜ム。必ずや炎神共を一網打尽に出来るのなら、構わないゾヨ。
その代り、失敗は許されないゾヨ、ヒラメキメデス!」
この瞬間、ゴーオンシルバーの受難は始まった。
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拘束されたままゴーオンシルバーは、別の部屋に連行された。
「私を助けるなんて、何が狙い?」
美羽はヒラメキメデスに質問した。あのまま放って置けばヨゴシュタインに
ゴーオンシルバーは処刑されていたハズだ。理由も無く助けるとは思えない。
「・・・理由?簡単です。私の手を焼かせた貴女方を楽に死なせるなど、
私には我慢なりません。精々、私の役に立って貰います。道具としてね。」
「私はアナタの言いなりなんて、絶対にならないわよ!たとえ死んでもね。」
美羽はメットの下でヒラメキメデスを睨み付けたが、抵抗するにも
宙吊りにされていたままでは、指一本触れる事は出来なかった。
ヒラメキメデスは色々な装置の操作をしながら、顔も向けずに返した。
「ええ。そんな事は別段、構いはしません。後はこちらで行いますので、
貴女は、そこで、そうしているだけで良いのですよ。フフフッ。」
そう言うと身動き出来ないゴーオンシルバーに、ビームが照射された。
それはメットや胸、脚などに当ったが、スーツを破壊する事もなく、
爆発を起こす事もなかった。ゴーオンシルバーは、一瞬うろたえたが
何事も無いと分ると、余裕の表情でヒラメキメデスを挑発した。
「何よ、これ?こんな攻撃じゃ、心配する必要もないわね。」
しかし、ヒラメキメデスは気にした様子も無い。
「そうですか。それは、それは。いやいや、楽しみですね。」
やがて、ゴーオンシルバーの全身に、劇的な変化が起きた。
「えっ?!何これ!そんな・・・う、うあぁぁぁぁ!!」
ビームが当ったメットやスーツが赤く錆び始めたのだ。銀色に輝いていた
メットは、赤くボロボロになり、スーツの表面は錆びて変色を始める。
予想をはるかに上回る事態に、冷静な美羽もパニックを起こした。
悲鳴を上げ、逃れようと暴れるが、ガチャガチャと鎖を鳴らすだけだった。
「どうですか?以前、使ったアカサビームを改良・強化したサビサビームです。
なかなか効くでしょう。そのス−ツも役には立ちません。」
悲鳴が消えた時、ゴーオンシルバーは無惨な姿に変り果てていた。
メットは崩れ落ち、スーツは錆びて所々穴すら開き、美羽の素肌が覗いている。
見た目にも、機能は大幅に低下している事は、間違い無い。
事実、炎神ソウルは錆びつき、ジェットラスは既に瀕死の状態だった。
うなだれたゴーオンシルバーをヒラメキメデスは見下ろしていた。
「ビームのデータを戴いて、ケガレシア様には感謝しなくてはイケマセンね。
では、次の作業に行くとしましょうか。あっ、命乞いをしても構いませんよ?」
返事を待たず、ボロボロのゴーオンシルバーに高圧電流が流される。
「ギャアァァァァ!!イギギギィィィィィ!ギエェェェェェ!!」
性能の低下したスーツでは、雷の何倍もの電撃に耐えられるハズが無い。
両目を見開き、全身をビクビクと痙攣させながら悲鳴を上げる。
やがて、ゴーオンシルバーの身体からうっすら煙が上がった
目が反転し、舌を出し涎をダラダラと垂らし、声が出なくなる。
暗転したゴーオンシルバーの脳裏に、黒く深い死のイメージが浮ぶ。
突然、電撃が止まった。美羽の意識は死の淵から、浮かび上がって来た。
「あ・・・・ああ・・・・カハッ!!・・・・うあぁぁぁ?!・・・」
「どうしました?まだ一回目ですよ。」
ヒラメキメデスは、ワザとらしく言った。そしてゴーオンシルバーに電流を流す。
「ヒギャアァァァ!イギィィィィ!!・・・・ア、アニィィィィ!!」
苦痛に喘ぐゴーオンシルバーを愉しげに眺め、ヒラメキメデスは言った。
「いえいえ、ゴーオンゴールドは、ここに助けになど来ませんよ。フフフッ。」
そう、ここはヘルガイア宮殿。ガイアークの本拠地なのだ。
今、この場にゴーオンシルバーを救う事が出来る者など、存在しない。
この瞬間、ゴーオンシルバーの、いや(須塔 美羽)のプライドは崩れ始める。
「イヤァァァァ!許シテェェェェ!もう、ヤメテェェェェェ!!」
髪を振り振り乱し、戒めから逃れようと子供の様に手足をバタつかせる美羽。
しかし、それも虚しく、スーツが火花を上げ、ジワジワと死んで行く。
美羽のバストが異常な伸縮を起こし、開いたの口からは、だらしなく舌が垂れ下がり
腹部がビクビクと不自然に引き締まってゆき、大腿部が不自然にに引き締まる。
そして、電流が止まる。ゴーオンシルバーは気を失い、宙吊りのまま力が抜けた。
激痛のために全身は脂汗塗れになり、常に凛々しかった表情は、無惨に崩れている。
ボロボロのス−ツは涎まみれになり、剥き出しになった下腹部からは、
ジョロジョロとだらしなく失禁してしまっていた。
ヒラメキメデスが頬を叩くと、ゴーオンシルバーは意識を取り戻した。
「私の記憶では、ヒューマンワールドではお漏らし、というのは幼児だけの行動だと
思っていたのですが、違うようですね。どうやら、成人女性にも有る様だ。」
その瞬間、ゴーオンシルバーのココロは折れてしまった。
敵の前で失禁など、プライドの高い美羽には耐えられない屈辱だったからだ。
「お願い!!もう、許して・・・・どんな事でも・・・言う事・・・聞くから・・・」
涙を流し、ゴーオンシルバーはヒラメキメデスに懇願した。
炎神に出合い、見込まれてアニと一緒に訓練を受け、ゴーオンウイングスになった。
勝つ自信はあったし、有り得ない事だが負ける事は死、と云う事も理解していた。
だが、こんな辱めを受ける事など、耐える事は出来なかった。
この陵辱を止めてくれるなら、もう何でもするつもりだった。そう、何でも・・・。
(・・・そうだわ!可哀想だけど、ゴーオンジャー達の居場所を教えよう。
それならガイアークもこんな事、きっと止めてくれる・・・・)
今、自分の意志で(須塔 美羽)は正義を、プライドを棄てた。
彼等を(悪)に売り渡し、この苦痛から逃れるつもりだった。
「助けて・・・ゴーオンジャーの居場所を・・・教えるわ。・・・だから・・・」
だが、ヒラメキメデスはゴーオンシルバーに、ゆっくりと残酷に言い放った。
「そんな事は構わない、と言った筈です。貴女の事情など、関係有りません。
先程、言ったでしょう?貴女は私の道具だと。」
その言葉に美羽は凍りついた。ヒザが震えだし、涙が止まらなかった。
ゴーオンシルバーは、理解した。いや、理解してしまったのだ。
憎い炎神のパートナーをズタズタに切り裂き、絶望させ、再起不能にする。
ヒラメキメデスは、ただ単純に自分を追い詰めた炎神に復讐したいだけだったのだ。
「うう・・・ううっ・・・もう、やめて・・・・お願い・・・だから・・・・・」
涙声の懇願を無視し、ヒラメキメデスは両目両耳の塞がったヘッドギアを取り出し、
怯えきったゴーオンシルバーの頭部に被らせた。
「な、何?!・・・いやあぁぁぁ?ヒギャァァァァァ!!」
スイッチが入れられるとゴーオンシルバーは、さらに甲高い悲鳴を上げた。
ゴーオンシルバーの両目には強力な発光信号、両耳には高周波が放たれた。
「ヒイィィィィィ!!脳が、脳が融ケルゥゥゥゥ!!ギャアァァァァァァ!!」
視神経と聴覚神経からの強烈な刺激は美羽の脳を激しく責め立てた。
全身へ狂った神経信号が送られ、ゴーオンシルバーの身体は自壊を始める。
跳びだした舌は芋虫の様にのたうち、間欠泉の如く失禁を繰り返す。
止まらなくなった涙は、ひたすら流れ続ける。全身の神経は苦痛に耐えられず、
白煙を纏いながら、肉感的な身体は狂った様に踊り続けている。
「うぎゃあぁぁぁぁ!ぎゃうぅぅぅぅ!ぐああぁぁぁぁ!!ウギャ!!・・・・・」
スイッチが切られると、ゴーオンシルバーも糸が切れた人形の様に崩れ落ちた。
ゆっくりヘッドギアが脱がされると、無惨に破壊された、哀れな素顔が現れた。
両目は白く反転し、涎は流れ出すがまま。失禁は止まらず、力無く吊るされてい
る。
最早、凛々しいゴーオンウイングスの面影は、全く窺う事は出来なかった。
ヒラメキメデスが、ボロボロになったゴーオンウイングスのエンブレムを
胸のベルトごとむしり取ると、拘束していた鎖が千切れゴ−オンシルバーは、
力無く床に崩れ落ちた。
エンブレムを失って自分の分泌液に沈み、ピクリとも動かないゴーオンシルバー。
「さあ、ゴーオンシルバー。私の役にたって貰いますよ。大事な駒としてね。
クククッ・・・」
奪い取ったウイングスのエンブレムを、ゴミの様に投げ捨て、憐れに壊された
ゴーオンシルバーの顔を踏みつけながら、ヒラメキメデスは低く笑い続けた。
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さらわれたゴーオンシルバーを、ゴーオンジャー達は見つけられずにいた。
六感で繋がっている大翔でさえ、美羽を捉える事はできず、皆焦るばかりだった
。
ゴーオンジャー達の捜索の結果、ある地点で微弱なガイアーク反応があった。
ゴーオンゴールドは、そこで(それ)を発見した。
(それ)は有害廃棄物の山に吊るされた、ゴーオンシルバーの残骸だった。
銀色のスーツごと心身ともに破壊されて、ズタズタにされた無惨な姿を晒し、
廃人同然にスクラップにされた(ゴーオンシルバーだった)モノ。
生きてはいる様だが、死人の様にピクリとも動かないゴーオンシルバー。
変わり果てた妹の前で、ゴーオンゴールドは言葉を失い、呆然と立ち尽くし、
それを見たゴーオンジャー達も、その姿に身動き一つする事が出来なかった。
やがて、(須塔 大翔)は姿を消し、二度とガイアークと戦う事は無かった。
そして、炎神達は走輔達を守る為に、パートナーを解消する事を決めた。


                                   
                          END



 




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