「サキュバス!」
単独行動中だったジャスミンの前に現れたヘルズ3兄弟の末娘、サキュバス。
「こちらジャスミン!みんな、ヘルズ3兄弟が…」

すぐに通信機で連絡を取ろうとしたジャスミンに、サキュバスは言い放つ。
「無駄よ。お仲間はお兄ちゃんたちの相手で手一杯。もう、やられちゃってるかもね」

「サキュバス、あなたは私が倒すわ!」

「これが最後のチャンスよ。相棒にならない?」

「何度も言わせないで!しつこいと嫌われるわよ。 エマージェンシー・デカレンジャー!
 フェイスオン! デカイエロー!!」
「79の惑星破壊の罪であなたを逮捕するわ!」
一瞬でデカメタル製スーツを装着し、構えをとるデカイエロー。

「ふふん。あいかわらずイキがいいわね。でも、私に勝てないわよ」
シャキン!サキュバスにもマスクが装着され、戦闘モードになる。
「だまれ!とあぁっ!!」
ディースティックを構え、サキュバスに挑むデカイエロー。
だが、剣技ではサキュバスの方が上手だった。

バシュッ!
右手のカッターでディースティックを受け止めて、反転しながら左手のカッターで胸を
斬りつける。
「あうっ!」
さらにすれ違いざま、目にも止まらぬ早さで脇腹・背中に斬撃をたたきこむ。
バシュッ!バシュウ!!
ダメージを受けたデカスーツが火花を上げる。
「くっ…」

ジャスミンは、背後にまわったサキュバスに回し蹴りを繰り出した。
「たあっ!」
が、なんとサキュバスは片手で軽々とそれを受け止めてしまった。
「なっ!?」

「遅くてハエがとまるわよ。ふんっ!」
足首を掴んだデカイエローを、そのまま壁に投げつける。
グワッシャーン!
コンクリートの壁は粉々に吹っ飛び、デカイエローごと崩れ落ちた。

「ぐ・・ううぅ・・・」
崩れた壁の瓦礫の中から、なんとか起き上がろうとしていたデカイエロー。
しかし、そのすぐ傍らにはサキュバスが。
「蹴りってのは、こうするもんだよ!」
サキュバスは右足で、はいつくばった状態から起きあがろうとしていたデカイエローの
無防備な腹を力一杯蹴り上げた!!
バッキャッッ―――ッ!
「ぐはっッ!!!」
蹴り上げられて垂直に吹っ飛ぶデカイエロー。
さらにその背中を、待ちかまえていた握り併せた両手の拳で上から叩き付ける!
「!!!!!」
グワッシャァ――――ッッッッン!!

砂煙が晴れたとき、サキュバスの足元はまるで爆発でもあったかのように小さなクレーターが
できていた。
そして、その中央で半分瓦礫に埋もれてうめくデカイエローの姿が・・・。
「く・・あう・・ぐ・・・・」
マスクのバイザーにはヒビが入り、イエローに輝くスーツも傷だらけで埃にまみれ薄汚れている。
立ち上がろうとするが、あまりの激痛に息ができない。
「あら、もうおしまい?だらしないわね」

やはり一人では勝てないのか・・・そんな思いがよぎったジャスミンの脳裏にバンの言葉が
よみがえる。
「正義は・・・正義は、必ず勝つのよ・・・・!」
呼吸を整え、再び立ち上がり構えをとるデカイエロー。
「セット!ディーショット!」
ディーナックルにディースティックをセットすると、厚さ30cmのコンクリートブロックを
粉砕するディーショットの連射をサキュバスに放つ!

だが、サキュバスはそれを全て紙一重でかわすと、デカイエローの懐に飛び込んだ。
目にも止まらぬ早さでデカイエローの首をつかんで、ダメージの残る腹部に連打で
ボディーブローを叩き込む。
ゴフッ!ドガッ!バキッ!ボコッ!
「あうっ!ごふっ!ぐあっ!!」

さらにサキュバスはデカイエローの右腕を掴むと、背中側へ力いっぱい捻り上げた!
「う、うあああぁぁぁ―――ッ!!」
肩の関節がミシミシと悲鳴を上げる。
「なかなかいい声で鳴いてくれるじゃないの」
ピチピチに張り詰めたデカスーツの表面が、デカイエローの腕への過剰な負荷を物語っている。
バキャッ!!
嫌な音が響きわたった。
デカスーツの限界をも大きく超えた力で、ジャスミンの右肩の関節が外されてしまったのだ。
「あぐっッ!!!!」
思わずマスクの中で、ジャスミンの瞳から涙が流れ落ちる。
だらりと垂れ下がって動かなくなって右手から、ディーショットも奪い取られてしまった。
「くっ、返して!」
「もちろん、返してあげるわ。ほら!」
ドシュ!ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!!
肩・胸・腹・太もも・・・至近距離で放たれたディーショットは次々とデカイエローに命中し、
スーツが火花を上げる。
「ああ!うああぁぁ―――!!」

ディーショットに撃たれたスーツはまだ破れてはいないものの、黒く焼けこげて白煙を上げている。
がっくりと膝を落とし、スローモーションのように崩れ落ちるデカイエロー。
だが、サキュバスは正面からその首を掴みあげ、イエローが倒れることを許さない。
両膝を着いた状態で首だけで立たされているため、 息が苦しい。
その首を絞める手を振りほどこうとデカイエローは腕にすがりついて抵抗するが、サキュバスは
そんなことは意に介せず、さらにその指を喉に食い込ませていく。
「う・・ぐ・・・く、苦しい・・・」
ついにがっくりと頭を垂れるデカイエロー。

「さてと、まずは素顔を晒してもらおうね。苦しんでる様子がよく見えるようにね。」
サキュバスはデカイエローが完全に気を失ってしまう前に、首を絞めていた手を弛めた。
さらに胸の高さにあるイエローのマスクを、両手で左右からしっかり持ち直す。そして腕を
いっぱいまで伸ばして遠ざけると、それを一気に引き寄せながら顔面に強烈な膝蹴りを叩き込んだ!
「ふんっ!」
ドガッッッ!!!
「ぐはぁ―――ッっ!!」
マスクの中で声にならない悲鳴を上げるジャスミン。
さらにサキュバスは、デカイエローのバイザーから口元にかけて連続して膝を叩き込む!
ドガッ!!バキッ!!ベキッ!!バキャッ!!
「ぐっ!あぐッ!がはっ!ごふっ・・」
一撃一撃が斧で殴りつけられるようなダメージである。
そのたびにマスクは顔面で小爆発を起こして、ジャスミンの悲鳴と共にバイザーやデカメタルの
欠片を飛び散らせていく。

「ぐ、あう・・・ううう・・・・」
何回かの爆発でバイザーは完全に破壊され、汗に汚れたジャスミンの素顔がマスクから覗いていた。
マスクに守られてはいるものの、顔面への執拗な暴力によって美しい顔は傷だらけになり、口元から
は一筋の血が流れている。
それでも、絶望的な状況を前にして決してあきらめないジャスミンの瞳が、破壊されたバイザーの
中からサキュバスを睨みつけた。
「いいわねぇ。その表情。イキがいい方が壊し甲斐があるってもんだよ。」

いつのまにかサキュバスの右手には、ディーショットから取り外したディーナックルが
握られていた。サキュバスはイエローのマスクを横向きにして左手で押さえつけると、
振りかぶった右手のディーナックルで側頭部を力一杯殴りつけた!!
バッキキャッ―――ン!!
「うああああああッッ―――ッッッ!!!」
マスク側部の赤い非常灯が粉々に飛び散り、ジャスミンの叫びが響きわたる!
デカレンジャーのスーツは装着者の五感を飛躍的に増幅させる能力も備えている。
マスクの側頭部は非常灯としてだけでなく、聴覚神経に間接的に接続して超人的な聴覚を
与える機能を持っていたのだ。
それを叩き壊されたジャスミンの苦痛は言語を絶するものだった。
破裂したマスクの右側頭部をどうにか動く左手で押さえ、転げ回って悶絶するデカイエロー。
「ああああッ―――ッッ!!み、耳がああっ――ッ!」

「あっはっはっ!いいザマだね」
デカイエローの背中をサキュバスは足で踏みにじる。
黄色に輝くスーツは踏み付けられて皺になり、足の形に汚されていく。
さらにサキュバスはイエローの背中にまたがると、顎と喉の間に手を添えたまま力任せに顎を
持ち上げてキャメルクラッチをかけた。
エビ反りになったイエローの背骨が、ミシミシと悲鳴を上げる。
「がッ!!ぐはああっ―――うああああッ!!」

そして側頭部の割れ目と破壊されたバイザーに手をかけると、力任せにマスクを引き裂いた!
既に傷だらけになってほとんどの機能を停止していたマスクは、あっけなくリリースされてしまった。
ぐったりとうつ伏せで横たわり、傷だらけのデカスーツで完全に素顔を晒しているジャスミンを
足で仰向けにひっくり返す。
顔面をいたぶられたときの無数の傷跡、汗にまみれた美しいストレートヘア、口元に残る血糊、
目尻から流れる一筋の涙がその情景をさらに惨めなものにしていた。

「さて、そろそろ仕上げといくよ」
サキュバスは、そのままデカイエローの腹の上に馬乗りになってマウントポジションをとった。
スパイクの付いた大型の金属製ナックルが瞬時に転送されて、その両手に装備される。
「ううう・・・そ、それは・・・!?」
「気が付いたかい。そうさ。あんたたちのマシンを破壊したゴッド・パウンダーと同じ技だよ。
あたしの誘いを断った罰だ。苦しんで死にな!!」

サキュバスは左手を思いきり振りかぶると、デカイエローの右胸にその拳を叩き込んだ!!
ドガアアァァ―――ッッッ!
「ぐふああぁぁ―――――――ッッ!!」
ジャスミンの形の良い乳房が潰され、その柔らかい肉の中にナックルが深々と沈み込む!!
ナックル先端のスパイクはナイフのような鋭いものではないが、それが一層苦痛を激しいものに
している。
想定された限界をはるかにこえた衝撃でデカスーツの表面は爆発を起こし、スーツは内側で胸部を
守る強靱な人工筋肉の繊維ごと引き裂かれていく。
続けて、サキュバスの右の拳がデカイエローの左胸に突き刺さる!!!
「がはっ!うあああぁぁ―――――――ッッ!!!」
黄色と黒に輝くスーツに守られた胸の柔肉は深くえぐられ、再びジャスミンの悲鳴が響きわたる!

さらにサキュバスは、デカイエローの胸にメガトン級パンチを休むことなく叩き込んだ。
ドカッ!バキッ!ボゴッ!バキッ!ドガッ!!・・・
「ぐあぁぁ――ッ!!ぐはっッ!!あぐっ!・・・ごふ!・・・うッ・・・・」
ナックルが深く胸に沈み込むたびに、反動で陥没していた逆の胸が再び盛り上がる。
千切れた人工筋肉や断線した回路の配線がスーツの破れ目から飛び出して、そして次の瞬間には
その膨らみを強調した胸を圧倒的なパワーと冷酷な凶器が叩き潰す・・・

呼吸が止まり、胃液が逆流する。
ふだんは知性を感じさせる唇は苦痛に激しく歪み、血の混じった胃液が時折流れてスーツを
汚していく。最も嫌な相手に全く抵抗することもできずに、好き放題に殴られ続けている悔しさに
涙が止まらない。
うめき声もだんだんと力無くなっていく。
もう、手足一本動かすこともできない・・・

デカイエローが抵抗しなくなると、サキュバスは殴打の手を止めた。
その時には、デカスーツの胸部から腹部にかけては目を覆いたくなるような惨状となっていた。
ズタズタに破れて焼けこげたスーツからは、かつて人工筋肉だったものの切れ端がはみ出ている。
その下にあるインナーの白いボディスーツも大きく破れ、ジャスミンは二つの胸のふくらみを
惜しげもなく晒したあられもない姿にされていた。
しかし、その美乳は想像を絶する暴力によっていたるところが陥没し、淡いピンクと透き通るように
白いはずの肌も内出血によりどす黒く変色している。

意識が朦朧としていたジャスミンだったが、髪を掴まれて無理矢理起こされる痛みにより現実に
引き戻された。
サキュバスはデカイエローの上半身を引き起こすと、後ろからその露出された両胸を鷲づかみに
して握力最大で握りつぶす!
「うああぁぁぁぁ――――ッッ!!」
その悲鳴を楽しむかのように一呼吸おいて蛇に似た舌で舌なめずりすると、サキュバスは
デカイエローの首筋に噛み付いた!!
ガブリッ!!
鋭い牙が白いインナーを簡単に貫通し、ジャスミンの素肌に突き刺さる!
「!!!!」
サキュバスはその名の通り、吸血鬼のように噛み付くことで相手の生命エネルギーを吸収する
ことができるのだ。
噛み付いたところから流れ出る血が白いインナーを鮮やかな赤に染めて、さらにデカスーツを
伝わって流れ落ちていく。
急速に生命エネルギーを奪われる脱力感。気が遠くなっていくジャスミン。
さらにサキュバスはエネルギーの吸収と引き替えに、今まで蹂躙してきた星々の恐怖を大量の
イメージにしてエスパーであるジャスミンに送り込んだ!!
「そんな・・あああぁぁ・・・・や、やめて・・・・・!!」
「あっはっは!エスパーの生命エネルギーは最高だね。もっと苦しむがいいよ!!」
滅ぼされていく星の人々の恐怖・悲しみ・絶望のイメージが、怒濤のようにジャスミンの頭の中に
流れ込んでくる!
「い、いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッッッ!!!!!」
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そして、エネルギーを吸い尽くされ放り捨てられて地面に横たわるデカイエロー。
いや、かつてスペシャルポリス・デカイエローだったジャスミンこと礼紋茉莉花と言ったほうが
よいのかもしれない。
だが、彼女は死んではいなかった。
「コロスには惜しいわね。死なない程度にエナジーを残しといてあげるわ。また元気になった頃に
食べに来てあげる」
サキュバスはそう言い残すと異空間に消えていった。

ジャスミンが仲間に発見され救出されたのは、それから3時間後のことだった・・・ 



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