注;これはミョーコス氏の書かれた「開戦前夜」の続編となっております。


 ファントムの目論見どおり、インフェルシアに進撃するトラベリオンを駆るマジシャイン・サンジェル。
妻の心を壊し、辱めた冥界を許しはしない……、ン・マとの戦いでインフェルシアとも同じように
生きて行けると信じたマジシャインだったが、その信頼を裏切られたという思いは凄まじい怒りとなって
彼の心の炉を燃やしていた。
 封印の門をくぐり、スフィンクスの待つ玉座の間へ向かうマジシャインを追う二つの光があった。
それはマジレンジャーたちの父と母、ウルザードファイヤーとマジマザーであった、彼らもまた娘を
何者かに殺され、そして陵辱された悲しみを心に秘めていたが、今の怒りに燃えるマジシャインは、
ともすれば目に付く冥獣たちを全て、そのデストラクションファイヤーの炉にくべてしまうのではないかと
思われるほど激昂している。
 まだ麗と芳香を襲ったことがインフェルシアの総意という確証が無い以上、下手に彼が冥獣を殺害すれば、
今度こそ戦乱の世の中になってしまう。それを止めるために彼らはそれぞれバリキオン、ユニゴルオンを駆って、
マジシャインを追う。
 蹄の音を鳴らし天をかける黒紫の愛馬と白き一角獣、冥界への門に差し掛かったときに突如次元の壁が歪んだ。
「むっ!?」
「きゃああっ!!?」
 二頭の雄雄しき駿馬の上でウルザードファイヤーとマジマザーが異変を感じた瞬間、二人の姿が忽然と冥界の
門の前から消える。赤い光は冥界へ、白い光は、そのまま地下へと沈んでいった……、その場には、突如主を見失い、
慌てる二頭の聖獣だけが残された……。

「ああッ!!」

 空間転移の魔法が目的地にたどり着いたのか、マジマザーは乱暴に洞窟のような暗い空間に身を投げ出された。
したたかに体を打ち付けて、痛む体をさすりながらあたりを伺う。しかし、まさに漆黒の闇がその場に広がるのみ。
マジスティックの先端のMのマークに光をともしながらあたりを伺うマジマザー。
「ここは……一体……?あの人は……」
 共に空を駆けていたはずの夫を思い深雪は一人ごちる。
壁でもないかとゆっくり歩き始めるマジマザー、進みながらもあたりに意識を集中し、何かが襲ってきても
すぐに対応できるようマジスティックを構える。しかし、何も無い空間が広がるのみ……。
いや、突如暗闇に不釣合いなほど穏やかな笑い声が響いた。
「フフフフ…はじめまして、人の身でありながら天空勇者と結ばれた稀有な存在…マジマザー殿……」
「!?誰ですっ!隠れていないで出てきなさいッ!!」
 声は四方八方から反響して聞こえる、深雪はマジスティックを構えていつでも魔法を発動できるように構えて
あたりを伺う。しかし笑い声は留まらない。
「ふっふっふ……私はファントム。貴女の御息女を殺し、陵辱させて戴いた者です。以後…といってもあと
僅かですがよろしくお願いします」
「な…なんですって!?」
 この笑い声の主はぬけぬけと娘たちを殺したと言う、しかも笑い混じりに。
深雪の心の中に怒りがふつふつと燃え上がり始める。しかし、殺害したものが判明した以上この者を捕らえ、
ことの真相を暴くことが出来る。
その怒りを杖にこめて、マジマザーは自分以外のその空間を凍らせるほどの最大魔力を放とうとする。
「許せない……マジ・マジ・マジカ!!」
 杖を大きく振りかぶって、その杖を大地に思い切り叩きつけた。
瞬間、マジマザーを中心に氷雪がその空間を凍りつかせていく。
「どうですか!?この魔法で凍りつかせることの出来ないものはありません!!」
 氷雪の空間に凛としたマジマザーの声が響く、しかし、その返答は……ガシャアアアアアン!!という音と共に
砕ける氷と、それを砕き割った黒い霧だった。
「そ、そんな!?」
 混乱するマジマザー、そんな彼女の前に空間を覆っていた黒い霧が言葉を発した。
自分が悪魔族であること、なぜマジピンク・マジブルー・バンキュリアを殺したか……自分たちの生まれ、出自。
インフェルシアを支配していた時代と、ン・マに封印された屈辱の時代。そして、これから起こすマジトピア・
冥界・人間界を巻き込んだ戦乱を起こすという目的を……。
「な、なんて恐ろしいことを……そんなくだらないことのために麗と芳香!バンキュリアを!!」
 怒りに燃える深雪がファントムを打ち倒さんとマジスティックを振りかざし魔法を放った瞬間、ファントムの
前に5つの影が闇の空間から現れて氷雪の塊を砕いた。
「ああっ!?」
 マスクの中の深雪の顔が驚愕に染まる。
現れた五つの影、それはマジレッド、マジグリーン、マジブルー、マジイエロー、マジピンク…愛する
子供たちだったからだ。
しかし、そのうちの二人は今この場にいるわけが無い、「偽者だ」と深雪はすぐに察する。

「何のつもりですか!このような冗談を…、攻撃できないとでも思っているの!私はあの子達を愛しています!
しかし、だからこそ、あの子達の姿を偽る者たちなど許せないわ!」
「ふふふ、さて、私は高みの見物といかせてもらいます。ごゆくりとお楽しみください…」
「ハハハ……酷イコトヲ言ウナァ、母サン」
「アア、オレタチハコンナニ母サンノコトヲ愛シテルノニ」
「くっ!」

 姿を消したファントムに変わり、歩み寄る偽のマジレッドとマジグリーンが自分の怒りに答える。
しかし、その声はまるでガラスを爪で掻くような耳障りな音を響かせて深雪の耳に届いた。
これ以上の問答は彼女にとって不愉快そのものだ。マジマザーはマジスティックを振りかざして五人の中に
飛び込んでいく。
「マジ・マジカ!」
「ハハハ、遅イ!遅イ!」
「オラ!コッチダヨ母サン!!」
「く…っ、な、なんでっ!何で当たらないの!!」
 五人はマジマザーを取り囲み、彼女の放つ魔法を笑いながらかわしていく。
レジェンドフォームでないのに、すさまじいすばやさでマジマザーの攻撃をかわしては彼女をからかった。
自分だけでなく、子供たちも馬鹿にされているような悔しさに涙がにじんでくる。
しかし、一瞬の好機。氷の魔法が砕けた拍子に飛び散った氷のかけらがマジレッドの足に当たったのだ。
そのチャンスを逃すまいとマジマザーはマジレッドに駆け寄ると、マジスティックを振りかぶりその体に
打ちつけようとする。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

(2)
 しかし…、足元が盛り上がり、這い出た何かがマジマザーの全身に絡みついた!

「!?!? きゃあああああーーーーーーっ!!」

 マジマザーの体に纏わりついたもの、それは植物の蔓だった。
黒く、ぬめったマジマザーの太ももほどもある太さの蔓、それはギュルギュルと深雪の両手両足を絡めとり、
胸と腹部に絡んだ。
「こ、これは!?」 
「ヒヒヒヒ…俺ノ力ダヨ、母サン」
 偽のマジグリーンが笑いながら大地に手を当ててマジマザーを見つめる。
「そ、そんな…薪人と同じ能力を使うなんて…」
「ソウサ、ダカラ…コンナコトモデキル!」
 
ギリギリギリギリギリッ!

「ギ…アァアァァアアアッ!!」

 マジマザーの体に食い込む蔓。それは腹部を締め付け、体の中身を搾り出さんばかりに力を込める。
その苦痛にマジマザーは絶叫した。
「うぁぁぁああ……っ!ヒギィィィィィッ!!やっ、やめぉぁぁっ!」
 さらに、手足に絡みついた蔓はマジマザーの手足を間接の限界以上にひねり上げて、骨を、間接を軋ませる。
壊れてしまったマリオネットのようにありえない姿をさらしていくマジマザー。
「ぎ、ぎぃぃぃっ!おうぅぅっ グ、ガッ、ぐぅぅぅーーっ!! ひぎゃあああああっ!」
 さらにその首に絡みつく蔓が、彼女の細首を締め付けた。
「ひゅごごぉぉっ!?!? かっ、かはっ! あ、あおおおおお…っ おおおお…っ おお…っ」
 息ができない。
その苦しさにマジマザーは逃れようと手を伸ばすが、深雪の両腕は蔓にとられたままで抵抗の一歩を
踏み出せずにいた。
必死に酸素を求めて、縛られた体が痙攣する、ビクンビクンと痙攣し始めた。
「かひゅーっ ひゅっ ひゅぅうっ が…… ぉが…」
 マスクの中の深雪の顔は真っ赤になり、血管が拡張してむくみ始める。
だんだんと頭の中が白んでいき、意識が刈り取られそうになった瞬間、マジレッドが彼女に語りかけた。
「苦シイカイ?母サン。ダッタラコレデ助ケテヤルヨ!」
 偽のマジレッドが両手をマジマザーに向けた。
その瞬間、その蔓とマジマザーの全身が炎に包まれた。なるほど、これならば蔓は燃えて、やがて
焼け落ちるだろう。
しかし、その炎は同時にマジマザーの全身をなめる様にまとわり突いているのだ。
「キャアアアアアアア!!あ、熱い!熱い!!ひぃぃぃーーーッ!ヒィーーーッ!!」
 まだ、体にまとわりついている蔓は燃え尽きない。
マジマザーは体を焼く地獄の炎に全身を揺さぶって必死に逃れようとした。
だが、その炎はさらに火力を増してマジマザーを焼いた。スーツごしとはいえ、高温の湯の鍋に放り込まれた
ような感覚に深雪は絶叫した。 
「お゙おおおおおッ!!ギャアアアアッ!熱いッ!あづいっ、あっ、あづぃぃぃいい!ヒィィィーーッ!
アヅイィィーーーーッ!!」
 マジマザーは体を左右に振りたくって助けを求めるが、助けなど来るはずもなく、断末魔の声は
響き渡り続ける。あまりに体を動かしたためか、同じように炎に包まれていた偽のマジグリーンの蔓が
ぶちりとちぎれて、マジマザーは地面に落ちた。身にまとわりつく炎をかき消すために、ごろごろと地面を
転げまわるマジマザー、しかし、魔力の炎は治まるどころかボォォォッとさらに火力を強めた。
「ピギャアアアアアアアアアアアッ!!」
 怪鳥のような悲鳴を上げてマジマザーの体がビクンっと痙攣した。
その様に偽のマジブルーが手を差し出した、しかし、それは救いの手ではなく更なる加虐の魔の手だった。
「ウフフフ、ソンナニ熱イナラ冷マシテアゲルワ」
 ドポンっとマジマザーの体の上に巨大な水の塊が出現した、その塊はマジブルーが手を下ろすと同時に
マジマザーの体を包み込んだ。一瞬で消えるマジレッドの炎地獄、しかし、次にマジマザーを襲ったのは
水地獄だった。突然冷やされたマスクとブレスとプレートにひびが走り、その隙間から水が入り込んでくる。
ゆっくりゆっくりと、しかし確実にマスクの中に入り込んでくる水がマスクの中の深雪に恐怖を与える。
「ひっ、ひぃぃっ!!た、助けてッ!たすけてぇぇぇーッ!!」
 必死に水の塊の中を泳いで顔を水から出そうとするが、水の固まりはそれにあわせてうごめいて、泳いでも
泳いでも決して出口が見えない。
平泳ぎのように足をがにまたに開いて無様に水を掻く姿に五人の偽の子供たちとファントムの笑い声がそ
の場に響き渡る。
マスクの中の深雪の髪の毛がひびの入った後頭部のあたりからだんだんと濡れていき、マウスガード付近の
ひびから入ってきた水によってあごと唇の間まで水が溜まってきた。
「ヒィィーッ!ヒーッ!ひーっ!!いやっ、いやあぁあぁぁぁッ!!…ごぼっ!」
 そして、とうとう深雪の口まで水が浸食してきた。
「ア゙ァァァァーーっ!いやぁぁぁぁぁっ!!い…がぼぼっ!がばっ、がぼぼっ!!」
 水の浸食はとまらず、マジマザーのマスクの中すべてが水で満たされた。
当然、酸素を奪われ、もがきくるしむ深雪。

「ガボババッ!ガボボッ!ガバァッ!」
 空気の塊がマスクの隙間からあふれて、マジマザーの頭上に泡ができる。
その泡の塊が深雪のじたばたと暴れる動きに合わせて大小作られては上っていく。

ボコッ

ガバッ、ボコッ、ブクブクッ、ボコォッ、 ボコッ、ボコッボコボコッ! 
ボコッ、ボコッ、ブクブクボコンッ 

ボコッ

ボコッ 


(ぐ…ぐるじぃいっ!!息っ!息を…こきゅう、こきゅうざぜてぇぇっ!!)

 マスクの中の深雪が白目を剥き始め、容赦なく口の中に進入してくる水が気道に入り込み、げぼぉっと
水の中で咳き込む。だんだんとマジマザーの抵抗がゆっくりとなってきて…やがて、ポコンと小さな泡が
頭上にできるとそのままマジマザーのところどころ黒くこげた白いスーツはゆっくり沈んでいった…。



(3)
 水の塊が消滅して、地面に仰向けに横たわるマジマザーの体、ひびだらけのブレスとプレートに包まれた
豊かな乳房は上下していない。
だらりと投げ出した手足からも生気を感じられない…、そのマジマザーのマスクがはずされる。
恐怖に染まった深雪の頬に濡れた髪が張り付き、壮絶さとともになんとも表現しがたい様子を晒していた。
その深雪のブレストプレートにマジイエローが手を当てると、バリッ、バリッとマジマザーのアーマーを
引き剥がすと、豊満な乳房が姿を現した。むにゅ…、むにゅ…とその乳房をもみこむマジイエロー。

「ヒヒッ、何ヤッテヤガル、サッサトヤリナ」
「ソウヨ、マダ私ハオ母サンヲイジメテアゲテナイノヨ」
「チッ、ワカッテルヨ!」

 マジレッドとマジピンクの声に舌打ちしながらマジイエローは胸をもんでいた手を胸と胸の間に置き…
その能力である雷を放った。バリバリバリバリっ!と黄色い閃光がマジマザーの全身を走り、ビクンッと
体が大きくえびぞりに反るマジマザー。しばらく待ち、再び電流を流す。またも大きく痙攣するマジマザーの体。
 何度かそれを繰り返して、五回目の電撃で深雪が大きく体を反り返らせて咳き込んだ。
「げぼぉっ!!げほっ、ゲホォッ!ゲホォッ!げ…オオゥエエエエエ!!オウッ、おっ、おおおおおおおッ!」
 肺に入った水が逆流するすつらさに涙を流しながら体を横たえて水を必死に吐き出す。
ぼたぼたと水があふれて涙とともに鼻水が噴出す、その髪の毛をつかんでマジイエローは4人の前に晒した。

「ウワァ〜、ヒデェ顔」
「オ父サンノ百年ノ恋モサメルッテヤツネ」
「ヒャハハハッ、今、鼻チョウチンガ膨ランダゼ!?カッコワリィ〜」
「あ……あぁ…うっ、うっ  …うぅぅ〜、うぅぅ〜っ、あぁ〜〜!」

 無様な貌を晒される恥辱に思わず声を上げて鳴く深雪。
その鳴き声と表情に更に大きくなる笑い声。そして、マジマザー深雪にとっての地獄が再開された。髪を
つかんだままのマジイエローが再び電流を深雪に流した。バチバチバチバチィィッと音を上げて、深雪の体を焼く
電流に悲鳴を上げた。

「あきゃああああああああああああああッ!!!」

 蛙の電流による筋肉の痙攣実験のように、ビクン!ビクン!と反り返る深雪の手足。
白目を剥いて電気攻めに甲高い悲鳴をあげてもだえる深雪に、さらにマジイエローは攻めを変えてくる。
頭をつかんでいた左手に加えてマジマザーの白いスーツごしに股間に右手を置く。
じっとりと肉の柔らかさと熱さをスーツで包み込んだそこの心地よさを感じながら、電流を「そこ」にながした。

「キャオオオオオオ〜〜〜〜〜〜ッ!オッ!オッ!オヒィィィィンッ!!!」
 
 黄色い火花が白いマジスーツを走り、太ももの肉が大きく痙攣する。深雪の絶叫をあげる口から舌がだらりと
はみ出して、涎の水溜りを地面に作る。キャメルクラッチでも掛けられたかのように、背中が限界以上に反り返る。
パクパクと口を動かしているが、声の無い悲鳴をあげる。
深雪は電流により、心臓が破裂するのではないかと鼓動が早鐘のように鳴り響いていた。
(し…死ぬッ 死んでしまうぅぅぅぅ!!!)

 だが、ふと電気が止む。「ひゅー… ひゅー…」と風切り音を口からこぼす深雪の頭をつかんだまま、体を
吊り上げるマジイエロー。軽々と持ち上げられた深雪の体の前に最後の子供の姿を模したマジピンクが立ちはだかった。
「サァ…行クワヨ…」

 パチン!とマジピンクが指を鳴らした瞬間、マジマザーの白いスーツに包まれた右腕に線が走った。
瞬間、ぶしゅっと赤い血が噴出してそこが裂けて、肌と傷口を露出させた。

「ア……アアアアアアアアアアアアッ!!」

 突然の激痛に深雪は悲鳴をあげた。マジマザーの白い、いや、既にところどころ黒こげたスーツを伝う赤い血…。
マジピンクの風を操る能力により生じた真空のかまいたちがマジマザーの右腕を切り裂いたのだ。

パチンッ!パチンッ!パチンッ!

「ヒギャッ! ギャッ! ああっ!」

 マジピンクが指を鳴らすたびに、マジマザーのむっちりとしたふともも、わき腹、美しいほほに線が走り赤い花が咲く。
さらに片方の手を加えて、乾いた破裂音はさらにリズムが高くなっていく。

パチッ、パチパチパチパチッ!パチンッ!パチンッ!パチィンッ!

「ギャァァッ!ウアアッ!ヒギャっ!ギャウウウウウッ!んおおおおおおうっ!」
 
 あまりの激痛に深雪は獣じみた声をあげてもだえ苦しんだ。
肌が裂けるたびに、焼けるような赤い血の熱さを感じた直後に襲い来る激痛…、その後も指を鳴らす音は続いた…。


「ぁ……も、もう……許して…許してください……」

 息も絶え絶え、というようにマジイエローに捕まれたままの深雪がとうとう偽の息子たちに助けを請う。
そのマジマザーの体をぼとりと落とす、力なく体を大地に投げ出したマジマザーは五人から逃れようとずるずると地面を這う。
少しでもこの憎き五人の子供たちの偽者から逃れようと必死に地面を這う。

「ひぃ…っ ひぃぃ…っ 」 
 しかし、五人の足音は追ってこない。だが、そんなことどうでも言いといわんばかりにずりずりと逃げる。
マジマザーの身をよじる白いスーツに包まれた臀部を眺めながら、五人は笑い続けた。
ふと、深雪の目の前に何か細い柱のようなものが現れる。マジマザーは思わず顔を上げて見上げるとそこには・・・
「ああっ!」
 深雪の顔が歓喜に輝く。
「あ、あなたっ!ヒカルさん!」
 そう、そこにいたのはウルザードファイヤーとマジシャイン。
マジマザーはまさに地獄に仏といったかのように、ウルザードファイヤーの足に抱きついた。
「ああっ!あなたっ!あなたっ!」
 これで助かる…、マジマザーは安堵しながら体を起こそうとした。
瞬間、深雪は腹部に衝撃と激痛を受けた。
「グホォッ!?」
 腹部を見下ろすマジマザー、その目が見たものは自分の腹部から突き出たウルザードファイヤーの剣だった。
信じられない…というような目で愛する夫を見た深雪…、そして彼女は思い知った。
彼らもまた、偽者だということに。
「あ……あぁ… アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!ごほっ、げほぉっ」
 絶望と死の恐怖に絶叫を上げる深雪の口から鮮血の塊がほとばしり、胸元に落ちて真っ赤に染める。
血が口内を埋めて息ができない…、絶叫が止まる。そして彼女は理解した。自分はここで死ぬのだ、ということを…。
ずしゅっと血をほとばしらせながら剣が抜かれる。

「ぎゃふぅぅっ!」

 ばたんと地面に倒れ付すマジマザー。
その両足をウルザードファイヤーはそれぞれつかむと大きく広げた。
マジシャインの前に晒される白いスーツに包まれた秘所のワレメ。そこにマジシャインは狙いを定めると…容赦なく
引き金を引いた。

バスンッ!

「   ッ!!! ギギャアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 断末魔とも言うべき悲鳴がそこに響き渡った、魔力の弾丸は五人の子供を育み、生み出した秘所を貫いた。
すさまじい熱さと激痛がマジマザーの内臓を焼いた。下腹部に起こった大火災に深雪は大きく体を反り返らして身悶えた。

「ヤ、ヤベデェェッ! ヤメ、ヤメ、ヤベデェェェェッ! コロザナイデェェーーーッ!」
 
 必死の懇願、しかし、返答は銃弾の雨嵐だった。

バスンッ!バスンッ!バスンッ!バスンッ!
「ぎ、ググぇぇっ!!イ゙ヤ゙ァァァァッ! 死ぬ゙!死んじゃう!ゴロサレジャウウウウウウウッ!!
ギャアアアアアアアアアアッ!」
「辛イダロウ、痛イダロウ……助カリタイカ?」
「ハイッ、ハイッ、ダズゲテッ!タスゲテグダサイイイイイイイイイイッ」

 突如掛けられたウルザードファイヤーの声に、血を吐きながらコクコクとうなずき助けを求めるマジマザー。
その声にマスクが怪しくきらめき、そして…。

「ヨシ、分カッタ」

 ウルザードファイヤーの剣の刃が深雪の首に当てられたかと思うと、ザシュッという音がその場に響いた。

(4)


「う、うおおおおおッ!み、深雪ッ!!」
 ウルザードファイヤーの怒りと悲しみに染まった絶叫が響く。
マジマザーと同じように飛ばされたウルザードファイヤーは見た。冥獣人たちが囲むなかにもはや自分と同じように
真紅に血に染まったスーツ。そう、彼の最愛の妻のマジマザーのスーツに群がり、むさぼる冥獣人たちを。
既に両手両足は失われ、達磨のような、いや、首がないために達磨以下の愛妻の姿…。

「き、貴様らっ!絶対に許さんっ!!」

 剣を抜き、その冥獣人たちのなかに切り込んでいくウルザードファイヤー。
天空聖界最強の剣士にばらばらに切り刻まれ、燃やされていく冥獣人たち。
彼ら冥獣人たちはたまたまその場にいただけだった、いや、ファントムの催眠によりマジマザーの死体のそばに集められた
冥獣人たちだった。その目にはマジマザーの死体はそれぞれ大好物としている魚や、野菜、岩、水のように見え、
本能のままに食事をしていただけだ。そう、この怒りに燃え、我を失ったウルザードによる大量虐殺を行わせることで、
天空聖界、冥界の争いを決定的なものにするための生贄となるためだけに…。

 ファントムはそれを水晶玉で眺めて嬉しそうに笑った。

「ククク…、マジシャインだけでなく、ウルザードファイヤーにも保険をかけておいてよかった。なぁ、深雪どの、あなたも
そう思うだろう?」
「……」

 振り返った水槽の中に深雪の首があった。
ファントムは悪趣味にも、マジマザーにこれから起こる戦争と、悪魔族が歴史の表舞台へと上る邪悪な歴史の証人へと
選んだのだった。
首から下は謎の悪魔族の機械から伸びたチューブのような触手が接続されて生命を維持していた。
また、呪術により不老を与えて、これから起こるすべてを見せようと言うのだ。


(あなた……、翼…、薪人…、魁…)

 水槽の中では見えないが、確かにその深雪の目から涙が流れた…。
この後、深雪はスフィンクス、子供たち、愛する夫、人類、冥界、すべての死と悪魔族の支配を見せ付けられ、2000年の
後も悪魔族王城の一角でその首だけの悲しい姿を晒され続けた…。
彼女に死が来るとき、それは悪魔族が最後を迎えるときだ。だが、それは一体いつなのだろうか……。


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