episode2-1: 惨敗

学園近くの児童公園。
冬が近いせいか怜悧な空気が流れ、公園の入口まで辿り着いた暁子も身震いする。
冷気にあたった暁子の顔は朱桃のように薄紅色に染まっている。
「鈴奈ちゃん、どこだろう?」
辺りを見回す暁子。漆黒の闇に包まれた夜の公園は寂しく静まり返っている。
やがて園樹脇の外灯にうっすらと照らし出される一つの人影。
「鈴奈ちゃん?」と駆け寄る暁子。
「えっ!?あ、あなたは!?」
外灯に照らし出されたシルエットは確かに鈴奈に見えたはずだった。
しかし、今、暁子の目の前にいるのは禍々しい姿をした“悪魔”だった。
(しまった!騙し討ち!?)
瞬時にガブリエルに変身する暁子。
「あなた!!鈴奈ちゃんをどうしたの!?彼女は一体どこ!?」
よりによって自分の親友である鈴奈を利用するなんて。
もしかしたら鈴奈の身に何かあったかもしれない。
暁子は心配でならなかった。しかし、
「『鈴奈ちゃん』ならあなたの目の前にいますよ」
「え・・・?」
一瞬の困惑と同時に暁子はいつの間にか地に伏していた。
暁子は何が起こったのか訳も分からないまま顔を上げる。
その視界いっぱいに漂う無数の羽根。

背中を見ると自分の翼が、根元の方からごっそり引き千切られている。
(攻撃された!?反撃しなくては!)
しかし、立ち上がる暁子の手に自慢の愛槍は無かった。
「素手では戦えないでしょう?ほら、お返しします」
悪魔の囁きが聞こえた次の瞬間、暁子の左脚に激痛が走る。
「うぐゥッ!」
暁子の左太腿に深々と突き刺さる長槍。
「ぐあ・・・あ・・・」
苦悶の声を漏らす暁子に対して悪魔は攻撃の手を緩めない。

ドカア!!!

死神が持つ大鎌のような凶刃を全身に受け、吹き飛ぶ暁子。
ぽたぽたと滴る鮮血。
堅牢を誇っていた鎧冑も無残に破壊され、見る影もなくなっている。

しかし“悪魔”は追い討ちを止めようとはしない。

バス!バス!バババス!!!

“悪魔”が放つ無数の弾丸が暁子の体を容赦無く貫いていく。
勝敗は決した。

ボロ雑巾のようにズタズタになった暁子を、“悪魔”はまるで狩りで捕らえた獲物のように丁寧に持ち抱えた。
「うふふ・・・きれいですよ、暁子さん・・・」
「あ・・・ぐ・・・っ、私の・・・名前・・・を・・・」
想像を超える苦痛と絶望、そして敵の正体への猜疑に苛まれながら、暁子は意識を失った。

episode2-2: 陵辱


「はあ・・・はあ・・・」

「ふふ、どうですか暁子さん。気持ちいいでしょ?」
暁子は、捕らわれていた。
気がついたらどこかの牢のようなところに入れられて、両手は
枷で繋がれてしまっていた。 
“悪魔”ベルゼバブが暁子の股間を何度もまさぐる。
そのような行為を一切体験したことのない暁子は、羞恥と未知の快感とで頬を紅潮させていた。
「何で・・・どうしてあなたが、こんなことを・・・」

「ふふ、私の正体を知って驚いてるんですね。かわいい・・・」
「答えて・・・鈴奈、ちゃん・・・」
二人・・・暁子と“悪魔”ベルゼバブこと黒部鈴奈は、クラスメイトだった。
そして親友だ、と
暁子は思っていた。
その鈴奈が、まさか憎き敵ベルゼバブだったなんて。
そのショックで
暁子は何も考えられなくなっていた。
「ずっと・・・ずっと好きだった。あなたのことが・・・」
そう言いながら、鈴奈は暁子に口づけをした。
自分の舌と暁子の舌を何度も絡ませる、
激しいディープ・キス。
「私・・・小さい頃親に捨てられて、施設で育ったんです。
 でも、そこで酷いいじめに
あって・・・中学を出たら、逃げるように全寮制の天使学園に
 入学しました。
 でも
ここでもまた・・・私はいじめられた・・・」
とても悲しそうな、今にも泣きそうな表情で鈴奈は過去を語った。
だが、それが突然
うってかわって明るい顔になる。
「でも、あなたは・・・私を助けてくれた。誰も私を愛してなんかくれなかったのに・・・
 あなたと、かおり先生だけは、いつだって私の味方だった。
 二人だけが、私を愛してくれた
・・・」
ここまで言い終わると、また彼女は表情を曇らせた。
「だから私・・・二人に好きだって・・・伝えましたよね。でも、女同士だからって・・・
 二人とも受け入れてはくれなかった。・・・その時ですよ、悪魔が私に囁きかけたのは」
「り、鈴奈ちゃん・・・」

その瞬間、鈴奈の表情が本物の悪魔のように凄まじいものに変わったのを見て、暁子は恐怖した。
「これほど望んでも手に入らないのなら・・・いっそ殺して自分だけのものにしてしまえ・・・ってね。」
「どうして・・・そんな」
親友の豹変に動揺し、震える暁子。
「でも、大丈夫・・・殺す必要はもうなくなりました。
今のあなたは、どこにも
行けはしない・・・一生、私のもの。私だけの・・・」
恍惚の表情を浮かべて、鈴奈は何度も暁子を抱き、キスをした・・・。

episode2-3: 処刑

どのくらいの時間が流れたのだろうか。
鈴奈は飽きもせずに暁子を責め続けていた。
「ぅ・・・ぁ・・・」
いつ果てるかも分からない鈴奈の陵辱の前に、暁子は衰弱しきっているようにもみえた。
しかし実際にはそうではなかった。
鈴奈が再び暁子にキスを迫った時だった。
暁子は渾身の力で両手の枷を振りほどき、そのまま鈴奈を突き飛ばした。
そして、どうせもう抵抗する力は残っていないと鈴奈はたかをくくっていたのであろう、床に無造作に置いてあった
ランスを拾い上げた。
「・・・暁子さん?」
「もうやめて!鈴奈ちゃん、お願いだから正気に戻って!」
「・・・そうか。私が愛している間にパワーをこっそり蓄えていたんですね。さすがですね、暁子さん」
「鈴奈ちゃん!お願いだから・・・」
「私は正気ですよ」
「そんなことない!あなたは悪魔の囁きでおかしくなっているだけよ!」
「私は正気ですよ・・・」
鈴奈は狂気と妄執に取り憑かれた見るもおぞましい笑みを浮かべ、暁子ににじり寄る。
「さあ、続きを始めましょ・・・」
「ひっ・・・」
たまらずランスの矛先を鈴奈に向ける暁子。
「・・・来ないで・・・」
「どうして分かってくれないんですか・・・暁子さん・・・?」
「あなたが悪魔の虜になっている限り、私はあなたと戦わなければいけない・・・。
お願いだからいつもの鈴奈ちゃんに戻って!」
「あなたは私のもの・・・」
「鈴奈ちゃん?」
「あなたはわたしのもの」
「鈴奈ちゃん、何を言ってるの・・・?」
「アナタハワタシノモノ!」
獣のような咆哮をあげたかと思うと鈴奈は暁子に向かって突進した。
「くっ!」
傷ついた左脚をかばいながらも間一髪で回避する暁子。
それでも鈴奈は再び暁子に向かって突進を繰り返す。
魔弾を乱射し、得物を振り回しながら何度も突っ込んでくる鈴奈の猛攻に対して防戦一方の暁子だったが、
「凄い力・・・だけど・・・冷静さを欠いてるから動きが単調ね。これなら・・・隙を突ける!
 手荒な真似になっちゃうけど・・・強引にでも鈴奈ちゃんを気絶させて、そして正気に戻さなくては・・・!」
そしてチャンスの時はきた。
ランスの攻撃範囲内に鈴奈の顔面がノーガードで入ってきた。
「鈴奈ちゃん・・・!ごめん!」
意を決してランスを叩き込む暁子。
しかし・・・・・・、
「そこまでよ」
ランスは鈴奈に届く事はなく、無情にもベリアルの手によって阻止された。
「ホント厄介なランスね」
「鈴奈さんも・・・もう少ししっかりしなきゃ・・・」
そこにはアシュタロトの姿もあった。
「そ、そんな・・・」
最悪だった。各々がエンジェリアを凌ぐ力を持っているというのに、それが3人も揃うとは。
暁子を襲う圧倒的な絶望感。
「大体こんな楽しいこと独り占めするなんて許さないわよ」
「そうですよ、これまで散々煮え湯を飲まさてくれた天使さんだもの。
私たちだって殺したくて殺したくてたまらないんですから」
「・・・分かりました・・・それじゃあ・・・皆一緒に殺しましょう」
それは、もはや戦闘ではなく虐殺だった。
暁子は持てる力の全てを出し切って必死の抵抗を試みた。
しかし、敵う訳などなかった。
「あ・・・ああ・・・うううっ・・・」
暁子は満身創痍となり、息も絶え絶えである。
「弱い・・・弱すぎるわ・・・こんなものなの、天使の力って?」
アシュタロトの嘲笑。
「ふっ・・・まああたしたち3人でやれば、負けるわけはないでしょうけど」
ベリアルが暁子の腕を掴んで押さえつける。
「ごめんなさいね暁子さん・・・ほんとは私一人で殺してあげたかったのに・・・」
そして凄惨を極める処刑が始まった。

暁子の胸を大きく切り裂く鈴奈。
「・・・・・・っ!!!」
鮮血が暁子のなめらかな肌を濡らす。
つづいてアシュタロトが暁子の柔らかい腹に、その刃を突き立てる。
「ぎ・・・っ」
2人の刃は何の抵抗も無く、まるで結婚式のケーキ入刀のようにズブズブと暁子の体内へと入っていく。
「ああ・・・あっ」
裂けた肺から血の塊と一緒にゴボゴボと音を立てて吹き出る空気。
同じくぱっくりと穴が開いた腹からは暁子の大事な内臓がボロリボロリとずり落ちる。
両腕も、力の加減を誤ったアシュタロトに握り潰された挙句、斬り落とされた。
そして、ついでだからという理由で腕につづいて斬り落とされる両足。
想像を絶する生き地獄。
これまでどんな窮地に陥っても希望を捨てず戦い抜いてきた暁子も今日ばかりは違った。
死。
自分に待っているのは確実なる死。
「い、嫌・・・・こんな・・・こんな・・・終わり方・・・い・・・や・・・・・・」
「さあ、暁子さん・・・そろそろ楽にしてあげますよ」
とどめを刺したのは、やはり鈴奈だった。
暁子の首を掻き切ると、鈴奈はその首をとっておきのオモチャのように大事そうに抱きかかえた。
「これで・・・暁子さんは私のモノ・・・」

次へ
戻る